ACOのピエール・フィヨン会長もミルと同じ見解を持つ人物のひとりだ。ル・マン24時間を運営する団体の長であるフィヨンは最近、イギリスメーカーから進捗の報告を受けていたこと声明で明かした。
「つい先日、アストンマーティンはヴァルキリー・ル・マン・ハイパーカー・プロジェクトの進捗状況について、我々に報告してくれた。その報告を頭に留め、どんなものが完成するのか楽しみにしていた」
「しかし、それからまもなくして、アストンマーティンが経営的に難しい局面を迎えていることを知り、耐久レースやF1といったモータースポーツ活動の将来についても疑問が湧いてきた」
「こういったプロジェクトを進めている際に、マニュファクチャラーが経済的、産業的問題に見舞われることはよくあることだ」
「ただ、我々はル・マン・ハイパーカーこそ、自動車メーカーが参戦するにふさわしいカテゴリであり、引き続き興味を惹く存在であると確信している」
「コストが制限されながらも、高いレベルのテクノロジーが駆使された車両でル・マン24時間とWECを戦えることは、自動車メーカーにとっては自分たちのパフォーマンスを披露するのに絶好の機会だ」
「我々としてはアストンマーティンとマルチマチックによるヴァルキリー・ハイパーカー・プロジェクトの一時凍結が、速やかかつポジティブな形で解除されることを願っている」
■プジョーも興味を示す「LMDhへの打撃はない」とACO会長
アストンマーティンはLMHプログラムを保留する理由に、次世代DPi規定とも言えるLMDhプラットフォームの存在を挙げた。
IMSAでは2022年から、WECでは2021/22年シーズンに導入される同規定は、両シリーズの象徴的イベントであるル・マン24時間、デイトナ24時間、セブリング12時間などに同じ車両で参戦でき総合優勝を争えるもの。
その特徴は現行のDPiと同様に、LMP2シャシーベースの車両のエアロダイナミクスを独自改良し、自社製エンジンを搭載するなど各自動車メーカーの特色を出すことができるシステムにある。
LMHと並行して導入されるこの新規定では単独サプライヤーのハイブリッドシステムが搭載される予定で、LMHよりもコストを抑えたレースカー製作が可能になる見込みだ。
現在、フェラーリやポルシェ、BMW、ランボルギーニ、レクサス(TRD)などがLMDhに興味を示しており、昨年11月に2022年からLMHクラスに参戦すると発表したプジョーもLMP2ベースの新規定への切り替えを検討していることを認めている。
フィヨン会長はアストンマーティンの決断がACOとIMSAが描く将来のスポーツカー構想を崩すことにはなりえないと明言。
「アストンマーティンの決定は、ACOとIMSAが提唱するLMDh構想への打撃にはならない。引き続き、3月中旬のセブリングでは共通プラットフォームの技術規定などの詳細について話し合う」と語った。
