続いては2022年からハイパーカーカテゴリーのライバルとなるプジョーについて。彼らは7月にその参戦車両『9X8』を発表しているが、記者からは『ウイングレス』という斬新なコンセプトを持つこの車両について、村田氏およびTGRチームの第一印象や、将来的にトヨタがウイングの小さい、あるいはそれを持たない車両を検討するか、という質問が飛んだ。

 かつてグループCカー時代にもプジョーと対戦経験のある村田氏は、「やっぱりフランスのデザイン力はすごいな、と。自分たちの常識を超えてくるデザインだな、というのが第一印象です」と語り始めた。

「技術的に言うと、ダウンフォースを出すときに、床下のデュフューザーで出すほうが効率はいい。リヤウイングで出そうとすると効率は悪くなるので。空力エンジニア冥利でいうと、ああいう形がおそらく理想的なんだろうなと思います」

「じゃあ、あれがクルマとして成立するのかということに関していうと、(LMH規則の)ターゲット・エアロウインドウが、昔のF1やTS050でやっていたような超高効率な空力ではなくなっているので、効率を落とした分デザインに振れるのかな……と頭では思うんですけど、あれがクルマとして充分足りているのかというのは、ウインドトンネルに入れたデータを持っているわけではないので、いまは何とも言えません」

「ただ、デザイン的には度肝を抜かれたのと、他車と接触したときにすごいいっぱいデブリが出そうだな、という印象はありました(笑)」

WEC第3戦モンツァに登場したプジョーの新型LMHマシン、『9X8ハイパーカー』のショーカー。実際のレースに用いられるマシンのモノコックは、9月にデリバリーされる予定だという。
WEC第3戦モンツァに登場したプジョーの新型LMHマシン、『9X8ハイパーカー』のショーカー。実際のレースに用いられるマシンのモノコックは、9月にデリバリーされる予定だという。

 今季デビューしたトヨタのLMH、GR010ハイブリッドの今後に関しては、これから社内で検討していくという。気がかりなのは、来年、そして再来年以降に多くの新型LMH/LMDh車両が参戦してくること。“後出し”の方が有利になる側面も、一般的にはあるからだ。

「(LMHは)ホモロゲーションを取ると基本はその後は5年(は凍結)、ただし途中で1回モデルチェンジをする権利がある、みたいなレギュレーションになっています」

「ですので、昔やっていたみたいに、毎年アップデートはできません。来年プジョーさんが来られて、再来年はポルシェさんやアウディさんなども来られて、おそらくすごい戦いになっていくと思うんですけれども、そこへ向けて自分たちのクルマをどうアップデートしていくかというのは、今後内部・社内で戦略を練っていこうかなと思います」

「ただいずれにせよ、昔のプジョーが出てきたときも今回もそうですけど、フランスの方のデザイン力っていうのは、アジア人の僕にとっては度肝抜かれるようなものがあるなと思いました」

 また将来に向けた技術的側面では、この取材日にシリーズより発表された、トタル・エナジーズにより供給される2022年からの100%再生可能な新燃料について、エンジン開発出身の村田氏は「まずはテスト・フューエルをいただいて、ベンチで台上適合をしていくことになります」と述べている。

「過去にもトタルさんとは燃料開発をする中でずっとコラボレーションしてきていて、お互い良く知っている仲ですので、そこはうまいこと開発していけると思っています」

 新たなライバル、テストに挑む新ドライバー、新燃料への挑戦など、新車デビューのシーズンを越えてなお、WECにおけるトヨタの近未来の活動は注目点の多いものとなりそうだ。

2021年のル・マン24時間レースを制した7号車GR010ハイブリッド
2021年のル・マン24時間レースを制した7号車GR010ハイブリッド

本日のレースクイーン

RiOりお
2025年 / スーパー耐久
raffinee μ's
  • auto sport ch by autosport web

    FORMATION LAP Produced by autosport

    トランポドライバーの超絶技【最難関は最初にやってくる】FORMATION LAP Produced by auto sport

  • auto sport

    auto sport 2026年1月号 No.1615

    ネクスト・フォーミュラ 2026
    F1からカートまで
    “次世代シングルシーター”に胸騒ぎ

  • asweb shop

    STANLEY TEAM KUNIMITSUグッズに御朱印帳が登場!
    細かい繊細な織りで表現された豪華な仕上げ

    3,000円