この決断を下したのはメルセデスのチーフ・ストラテジストを務めるジェームス・バウレスだ。バウレスはホンダ時代から在籍している生え抜きで、ブラウン時代の2009年とメルセデスで2度、合計3回チャンピオンを獲得しているベテランである。さらに現在のF1チームは1周ごとにコースを走行しているドライバーのギャップをグラフで確認することができるソフトをコンピュータに入れており、正確な判断を即座に下すことができる(写真はレッドブルのレース後のもの。一番上の黄緑色のラインがメルセデスの2台)。ハミルトンも2回目のピットストップに関しては、「チームは僕たちにレースをさせてくれた」と不満は言っていない。
だからこそウォルフは、今回の接触に大きく落胆していた。
「我々は、これまで一度もチームオーダーは出してこなかった。そんなことをすれば多くのファンから信用を失ってしまう。勝利のために、ふたりのドライバーを常に平等に扱い、自由にレースさせるというのが我々のフィロソフィだ。レース前、ふたりのドライバーに、そのことをいつも話しているし、自由に戦って良いと伝えている。ただし、それは相手とぶつからない範囲での話だ。こんなことが続くようでは考え直さなくてはならない」
ウォルフは2、3日中に首脳陣を集めてチーム内で話し合いを行う予定だと語った。そこで「チームオーダーも含めた、すべての選択肢を検討することになるだろう」という。果たして、今週末のイギリスGPまでに、どのような決断が下されるのか。