シルバーストーンに話を戻そう。実際にふたりはオーストリアGPの延長戦のような、迫真のサイド・バイ・サイドをここで見せ続けた。コース全域でコース幅を使い、ぎりぎりの攻撃とぎりぎりの防御を、ときには“タッチ”してもダーティーではなくフェアに。レーシング・バトルのお手本みたいだった(それにくらべ黒い2台マシン同士のスタート直後の接触プレーはいかがなものか)。

2019年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスのバトル
2019年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスのバトル

 先頭で競うボッタス対ハミルトンから上位グループも中団も後方集団も、隙あれば狙い察知すれば防ぎ、超高速コーナリング・コースでお互いがスキルを発揮。コーナーで観戦するファンはコクピットにいる気分になり、「いくぞッ」とか「きてるぞッ」と叫びながら引きずり込まれていった……にちがいない。

 ときどきTVカメラに映し出される観客のリアクションもアグレッシブ、1秒たりと目を離せない緊張感が客席から伝わった。

 この日は同じころにウインブルドン・テニス男子シングルス決勝「ジョコビッチ対フェデラー」、「クリケット・ワールドカップ戦イングランド対ニュージーランド」が行われていた。F1かテニスかクリケットか――。大観衆が見つめ興奮するイベントこそが、そのスポーツの格式や伝統や価値などを我々に知らしめるのだ。

 今年前半ここまでで、シルバーストーンが『ベストグランプリ』に値すると思う。いいレースになった理由――。

1:充分にコース幅が広いレイアウト(クロスラインが可能)
2:いくつもあるブレーキング・エリア(減速のがまんくらべ)
3:燃費的にシビアでなく“リフト&コースト”の要求度は低い(パワーコード走行可能)
4:ハードタイヤが低温条件にマッチ(熱ダレなどケアする配慮が減る)
5:セーフティカー導入がレース戦略にバリエーションを与えた(ハミルトンにとってはジャストタイミング)
6:新舗装路面のグリップが向上(最速ラップなんと3.327秒アップ!)
7:ブリティッシュ・ウェザーがアクセントに(変わる風向きと降りそうで降らない雨)
8:そしてなにより超満員の熱気と声援(下手なことはできない)――。

 いいレースをするのはもちろんドライバーでも、素晴らしいグランプリを創り上げるのはファンたちだ。たぶん1950年5月13日、最初のシルバーストーン戦もそうだったのではないかと想像する。

2019年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2019年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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