中盤、23周目のロッジアでルクレール対ハミルトン、究極のマッチレースの瞬間が。イン側の進入ラインをキープするルクレール、アウト側のラインで並走するハミルトン。互いにタッチはなかったが窮屈なスペースで減速ポイントをずらさねばならず、王者ハミルトンはエスケープを選んだ。

 さすがだと感じた。もしあの瞬間、意地を張っていたら接触はまぬがれない。アウト側なのでダメージを負う比率(度合)は相手より大きくなる。シリーズリーダーは先々を見通し、ここはいったん身を引く判断に出た(と思う)。仮にもしシーズン最後のタイトル決戦下であれば、五冠王のハミルトンは異なるアグレッシブな選択をするかもしれないが……。

 新鋭ルクレールもさすがだった。センチメートル単位のサイド・バイ・サイドに全くひるまなかった。右寄りでも左寄りでもない精確なラインと、浅くもなく深くもない極限のブレーキングを実行。平然とこの“対戦的プレー”をこころみた。「シャルルは並みの新鋭ではない」、ハミルトンははっきりそう認めたことだろう。

2019年F1第14戦イタリアGP決勝 ルイス・ハミルトン(メルセデス)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)
2019年F1第14戦イタリアGP決勝 ルイス・ハミルトン(メルセデス)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)

 終盤、ルクレールは孤軍奮闘に追い込まれていた。ベッテルはもうとっくにいない。メルセデス勢と『1対2』のバトルロイヤルを受けて立たねばならない。36周目、レッティフィーロへ進入する瞬間に左フロントをわずかにロック。フラットスポットができないよう、減速タッチをコントロールしミスをカバー。エスケープまで行かずに、動揺せずにクルバ・グランデを加速してロッジアまで再びガードラインに集中。

 抜くか抜かれるか、プレッシャーをかける王者の攻撃が執拗につづいた。後方で乱流をあび、タイヤ変調がじわじわ進んでも追走をあきらめない。42周目、レッティフィーロで今度はハミルトンが減速プレーで小さくないミスを。まっすぐエスケープゾーンへ、ここは昔からティフォシ大観衆が居る場だ。彼らはこういう場面を見たくてここにいるのだ。大歓声、どよめく。

 1対2の相手はボッタスに変わった。ルクレールは残り11周、DRS圏内に入られないように1秒弱から1秒強のギャップをキープ。ボッタスがなんとか圏内に入れたのは3度きり、そのときも焦ることなくきっちり守った。この防御がある意味で“攻撃”だった。

2019年F1第14戦イタリアGP決勝のバルテリ・ボッタス(メルセデス)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)
2019年F1第14戦イタリアGP決勝のバルテリ・ボッタス(メルセデス)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)

 2番手ボッタスに対し、迫ればフロントがロックしやすくなるよう仕向けたからだ。0.835秒差以上の心理的なタイム差に広げられたボッタスは今季6回目の2位で終わる。ひとりでメルセデスのふたりを封じこんだルクレール、全ての能力をこのイタリアGPに注ぎこんだ。

――モンツァを制するにはミスを少なく、エラーを小さく、シケイン減速プレーの精度を高め75分の『超高速戦』に集中する。テクニカルな速さとメンタルの強さ、すべてがルクレールにはそなわっていた。

2019年F1第14戦イタリアGP 優勝はシャルル・ルクレール、2位バルテリ・ボッタス、3位ルイス・ハミルトン
2019年F1第14戦イタリアGP 優勝はシャルル・ルクレール、2位バルテリ・ボッタス、3位ルイス・ハミルトン

2019年F1第14戦イタリアGP シャルル・ルクレールの優勝をチームで祝福
2019年F1第14戦イタリアGP シャルル・ルクレールの優勝をチームで祝福

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