Q:2019年はレッドブルとトロロッソの間でドライバー交代があり、ガスリーが古巣トロロッソへ戻り、ルーキーのアレクサンダー・アルボンがレッドブルへ昇格しました。彼らの2019年の評価と2020年の課題を教えてください。

尾張:ドライバー交代は正解でしたね。まずはガスリーですが、彼はチームからの信頼をすごく気にするタイプです。それによってメンタル面が成績を左右することが少なからずありました。

 そういうドライバーは多いけれど、それでは一流のドライバーにはなれないのではないかと思います。チームはそのドライバーと心中するわけではないし、『信頼していますよ』と言ったところで本人がそう思ってくれないとね。そういった点を考えると、トップチームは荷が重かったのではないでしょうか。

 走りに関してはまだまだ上を目指さないといけないにしても、後半戦を見たら悪くない。チームメイトのダニール・クビアトより予選の成績も良いし、しっかりできているなと思います。

 問題はメンタルです。シーズンオフになっていろいろ発言していますが、それが怖いですよね(笑)。おそらくヘルムート・マルコやクリスチャン・ホーナーはそういうものを気にしていないとは思いますが、ガスリーが『なんで僕をレッドブルに戻そうとしないの?』というような雰囲気になって、空回りしたり、変にマスコミを使って “ゲーム”をするのはよくない。トロロッソでも表彰台に上がれると思って頑張ってほしいですね。

2019年F1第19戦アメリカGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

 一方アルボンですが、レースでの安定感が後半戦で光っていたところだと思います。課題は予選だと本人も言っていますが、それはトロロッソの時も同じでした。これはF1ドライバーになった人たちのほとんどが抱える問題ですが、最初に直面する課題が予選です。

 F1では、FIA-F2などに比べるとセッション数は増えますが、同時にやらなければいけないことが比較にならないほど多いので一瞬たりとも時間を無駄にできない。FP1でコースインして2周目からクルマの本当のポテンシャルを発揮し、ミスをせず、きちんとフィードバックができないといけません。

 それでいてFP2ではもう予選と決勝レースの戦略を決めるくらいですから、FP2のロングランというのはレースと同じような走りが求められます。簡単なことではないですが、アルボンは少し時間がかかっているようです。

(2)に続く

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尾張正博
 宮城県出身。1993年よりフリーランスのジャーナリストとしてF1の取材を開始。一度は現場からは離れたが、2002年から再びフリーランスの立場でF1取材を行い、現在に至るまで毎年全レースを現地で取材している。

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