ドライバーとチームでレース中に異なる意見をぶつけ合うのは、必ずしもうまくいっていない2番手以下のドライバーだけとは限らない。ポールポジションからスタートし、ラップリーダーの座を1度も譲らないままレース後半に入っていたルイス・ハミルトンとメルセデスのピーター・ボニントンの間でも、最後に履くタイヤに関して、意見が割れた。チームはソフトを推薦したが、ハミルトンが納得いかず、たまらず無線ボタンを押した。

ハミルトン:ソフトは履きたくない。どうしてソフトにしたいの? このタイヤ(ミディアム)は問題ないよ。だから、絶対ソフトにしないでね

メルセデス:OK、ステイアウト、ステイアウト

ハミルトン:OK、もう1周する

 この1周の間に、メルセデスはミディアムでも問題なしと判断。翌50周目にハミルトンをピットインさせ、ミディアムを装着してコースに送り出した。ハミルトンはその後も安定した走りを続け、トップでチェッカーフラッグを受け、今シーズン4勝目を挙げた。

メルセデス:素晴らしい仕事だった。だれにもマネすることができないタイヤマネージメントだったよ

ハミルトン:ちょっとゾーンに入っていたみたいで、さっきがファイナルラップだと気がつかなかったよ

ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2020年F1第6戦スペインGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 ハミルトンがタイヤ選択に満足していたのに対して、満足できなかったドライバーもいる。12番手からスタートして、12位に終わったダニール・クビアト(アルファタウリ)もそのひとり。レース後、こう叫んだ。

クビアト:なんて散々なレースだ。本当に納得がいかない。オプションは問題なかったんだ。スタートのとき、みんなは僕の話を聞くべきだった。どっちのタイヤでスタートすべきかってね

 クビアトのスタート時のタイヤは新品のソフトタイヤ。オプションがソフトだったとすると、クビアトはミディアムでスタートしたかったのか。「オプションは問題なかった」というのは、ベッテルと同様、ミディアム→ソフトでの1ストップでも問題ないということだったのかもしれない。

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1第6戦スペインGP ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)

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