ホンダの八郷隆弘社長は記者会見で撤退した理由を「将来を見据えた技術者のリソースを『カーボンニュートラルの目標』達成に傾けるため」と語った。つまり、現在F1活動に関わっている多くの社員が、電気自動車をはじめとした、先進技術関連の部門に配置転換される模様だ。ただし、それはホンダ社内の話。イギリスのミルトンキーンズにあるHRD UKのスタッフには、現地採用でホンダのF1活動に加わった者が数多くいる。

 企業がF1活動をやめる場合に問題となるのが、現地採用のスタッフの処遇だ。ホンダがチームとして参戦していた第3期は2008年で撤退となったが、現地スタッフ(おもに旧BARのスタッフ)はロス・ブラウンがホンダから1ポンドで買い取ったチームとして生き残り、その後メルセデスに買収されて、現在に至っている。

 2009年シーズンでF1から撤退したトヨタの場合、現地スタッフはその後、WECに参戦。同様に2009年で撤退したBMWは、ペーター・ザウバーから買ったチームを再びペーター・ザウバーに譲ることで元の鞘に収まった。2010年限りで撤退したブリヂストンの現地スタッフの多くも、ピレリへ移籍。このように企業が撤退してもスタッフはF1に残って戦い続けることが多い。

 そうなるとHRD UKのスタッフもどこかでF1を続ける可能性が高い。メルセデスはホンダのターボ技術が欲しいだろうし、フェラーリやルノーもホンダの技術は魅力があるはずだ。

 HRD UKのスタッフに目をつけているのは、パワーユニット・マニュファクチャラーだけではないだろう。HRD UKには優秀なスタッフだけでなく、設備も充実している。2022年以降、有力なパワーユニット供給相手がいないレッドブルがそれに目をつけないわけではない。彼らは2015年にルノーとの関係がヒビが入ったときも、パワーユニットを自社開発する噂があがったほどだ。

 幸い、2021年以降、コストキャップが実施され、本体にかけられる予算は制限されるため、それよりも多くの予算を保持してきたレッドブルにとっては、HRD UKを丸ごと買い取り、そこに新たな開発費として予算を再配分させることは可能だ。

 果たして、どうなるのか?(※後編に続く)

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