6月7日、フランス・ル・マン市内では、昨日に引き続き24時間レースに向けての車検2日目が行なわれた。この日のル・マンは終日夏らしい陽射しが降り注ぐ好天。そんな中、2日目に登場したアウディR15+、そして日本勢をはじめ、35台のマシンが本戦に向けてマシンのチェックを済ませている。

　そのトップバッターとなったのは、今年唯一の日本チームとして参戦するJLOC。これまでも参戦経験がある余郷敦、山西康司に加え、これが初のル・マン参戦となるチームの“選手会長”井入宏之がジャコバン広場に現れた。中でも井入は、1週間ほど前にスパ-フランコルシャンで、ライター・エンジニアリングが新しく組み上げたランボルギーニ・ムルシェラゴをテストしてきたばかり。「クルマの仕上がり具合はすごくいいですし、スパも楽しいコースでしたよ」と笑顔を見せた。ちなみに、井入はル・マンだけでなく、ヨーロッパに来ること自体が初めてだと言うが、「いや、別に何も困ったことはないですし、全然違和感ないですよ。ただ日本やったら、こんなところで車検やったらエントラントがブーブー言うやろなとは思いましたけど（笑）。でもすごいと思いますし、ええな～」と、全く物怖じしない様子で語った。

　このJLOCの後、間もなく登場したのは、チーム・オレカ。プジョー908をドライブするオリビエ・パニス、ニコラ・ラピエール、そしてロイック・デュバルの3人も、揃ってジャコバン広場へとやってきた。ここで大人気だったのは、やはり元F1ドライバーのオリビエ・パニス。そのパニスは、LMS第2戦スパで、レース序盤にジャン・クリストフ・ブイヨンと接触してリタイヤ。そのため、今回のル・マンでは、スタートまでにまだまだやらなければいけないことが多いと思うと語る。「スパは、特にロイックをたくさん走らせてあげるためのレースだったんだけど、アンラッキーだった。でも、あれがレースだからね。ロイックもニコラも間違いなく速いドライバーだし、その能力は確かだ。でも、周回遅れの処理とかそういう部分にもっと慣れておいてもらいたいからね。あと、水曜日と木曜日には、雨が降りそうなんだけど、そういう状況はレースでも起こりうるから、そういうコンディションにもみんなが慣れておいた方がいい」

　一方、パニスから“たくさん乗る機会を作ってあげたい"と言われたデュバルは、「今はまだ月曜日だろう？　実際に走り始める水曜日までは、まだ1日以上ある。だから、今はクルマに乗り込むのが待ちきれない気分だよ」と、笑顔を見せた。

　そして、午後から車検場に姿を見せたのは、このレースで現役引退を表明している
野田英樹。1年前から引退の時を決意していたという野田だが、最後のレースを前に、その表情は穏やかで晴れやか。「こういうビッグイベントで自分のレースを終えられるというのは、やっぱり嬉しいですよね。このイベント自体が1週間ありますし、その中で、“こういうことが最後だな”って噛み締められる。普通のレースなら2～3日で終わってしまいますけど、世界3大レースで終えられるっていうのはね。だから、気負いとかプレッシャーとかをあまり感じることなく楽しみたいと思っていますし、1周1周全力で走りたいです」と落ち着いた口調で語った。

　さらに、午後2時を回ってから、場内に現れたのは、3台のアウディR15＋。今回の車検で最も盛り上がりを見せたのが、この時間帯だった。中でも、7号車のアラン・マクニッシュやトム・クリステンセンが姿を現すと、大勢の観客が回りを取り囲み、人垣で彼らの姿は見えなくなるほどに。ここでは、日本のファンからのフラッグにより大騒動となるが、詳細は別項にて。

　この日は、親子での参戦が話題となっている、ビーチディーン・マンセルチームも登場。こちらもファンの大きな関心を集めた。特に、父親のナイジェル・マンセルの周りは、黒山の人だかり。こちらも写真やサインを求めるファンが後を絶たなかった。

　こうして2日間の車検は終了。明日は、ドライバーのサイン会が催されるだけで、走行スケジュールは組まれていない。それでも2日間の水曜日から行なわれる走行に向けて、ドライバーたちの興奮は高まり始めている。