全日本ラリー選手権のトップカテゴリーは、ここ数年で大きな転換期を迎えている。最高峰クラスを席巻しているGRヤリス・ラリー2の登場によって、ラリーカーは市販車を競技用に仕立てる時代から、最初からラリーのために作られた専用車の時代へと進んだ。その変化を最前線で体感しているのが、1990年からラリーを戦い続ける奴田原文雄。1995年にはADVANのエースとして起用され、30年間にわたって最高峰クラスを戦い続け、計9度の最高峰クラス王者に輝いた大ベテランだ。

 三菱ランサーエボリューションとともに全日本ラリーの歴史を歩んできた奴田原。30年以上にわたってラリーカーの進化を見続けてきたベテランですら、GRヤリス・ラリー2には驚かされたという。クルマの挙動、セッティングの考え方、そしてタイヤとの関係性。いま全日本ラリーでは、競技車両の常識が大きく変わろうとしている。

■新たな車両哲学に突入したラリー2と、ADVANタイヤ開発の現在地

 30年間のラリー車両の進化は、単なる性能向上という言葉では片付けられない。その出発点となるのが、車両の成り立ちそのものの違いだ。

「もう昔のラリー車両とは、まるっきり違うクルマになりました。グループN時代のランエボ(三菱ランサーエボリューション。奴田原が長年乗っていたマシン)は、言ってしまえば乗用車をラリー用に改造しただけ。でもラリー2は、最初からラリーカーとして作られているんです」

 奴田原が長年戦ってきたグループN時代のランサーエボリューションは、市販車の基本構造や性格を色濃く残したラリーカーだった。改造範囲も限られており、いかに量産車のポテンシャルを引き出すかが重要だった。一方のラリー2は量産車をベースとしながらも、サスペンションや駆動系などの主要部分が競技を前提に設計・最適化されている。その違いは、クルマの挙動やセッティングの考え方にまで及ぶ。

ラリー2が切り開く新たな時代。30年間のマシンとタイヤの進化を9度の全日本王者・奴田原文雄が語る
量産車ベースでありながら、競技を前提に最適化されたラリー2マシン。その設計思想の違いを奴田原は強調する

 こうした規格の違いも踏まえつつ、奴田原が圧倒的な進化を感じているのはサスペンション性能だという。

「具体的には、どんな状況でも4つのタイヤがつねに路面に接地している感覚があります」

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