「過去30年くらい、戦闘力のコントロールはリストリクターや燃料流量計など、コンポーネントやクルマへインプットする部分でやってきました。オーガナイザー、もしくはFIAからすると分かりやすい・測りやすいからそうやってきたわけですが、その形だと出力とか戦闘力をコントロールできなくなってきているんですよね」

「ですので、アウトプット側でコントロールすることにトライし始めているのが、今回のカテゴリーの大きな特徴です。エンジンから出力されている出力値を測る、クルマができたら風洞に入れて空力値を測る。パフォーマンスのウインドウを規則で謳い、その中に入っていればどんなクルマでも、どんな作り方(成り立ち)でもいい、というのがいまトライしようとしていることです」

「自分たちが得とか損とかっていうことよりももっと先、21世紀のレースの仕方として、どんな形のクルマであっても……たとえば水素由来であってもガソリン由来であっても、それは参戦するメーカーのアイデンティティで選べばいい、と。だけど戦闘力はみんなそろえて、レース本来の目的であった抜きつ抜かれつの状況を作っていく。みんなで知恵を出して、新しいレースの形を作っていこうとしている、いまちょうどその入口に立っているんですよ」

■これからのモータースポーツへの取り組み方

「水素」という単語を村田代表は口にしたが、スーパー耐久第3戦富士SUPER TEC 24時間に参戦するカローラ・スポーツの水素エンジンを含め、この先の環境技術について話を向けられると、「抜きつ抜かれつというベースを持つ、レースの文化を潰してはいけない。そのために今後も継続的に取り組んでいくことが、レースに関わるすべての人たちの義務だと思います」とモータースポーツに関わる自動車マニュファクチャラーのあり方ついて説明した。

「地球の環境と自分たちが取り組んでいること(モータースポーツ)をどう合わせていくか、カーボンフリーとレースをどう融合していくかは非常に重要です」

「水素を直接内燃機関に入れて燃焼させるというのが、今度のスーパー耐久でのトライです。ただ、どれが一番とかこれにしなければいけないとかではなく、いろいろなチャレンジをして、地球にダメージを与えない形をみんなで模索していくことが一番大事だと思っています」

「内燃機関にしても、燃料にはいろいろなパターンがあります。そこにモーターと電池を組み合わせたものがハイブリッドであり、内燃機関を無くしたものがEVカー。いまの時代、『これじゃないといけない』『こうじゃないといけない』というのはもう無いので、ベストマッチなものを準備して、カテゴリーによってそれに見合った形を提案していくようになっていくのかなと思っています」

 速く・強いクルマと組織を作ってレースに勝つことももちろん大事だが、その世界を魅力的、かつ世間一般からも認められる形で持続させていくために、BoPはどうあるべきか、あるいは参戦車両はどういった技術を持つべきなのか。チーム代表としてだけでなく、フェローとしてGAZOO Racingカンパニー、ひいてはトヨタのモータースポーツ活動を導く役割も担う村田氏の、マクロな視点が色濃く伺える会見だった。

トヨタGAZOO Racing・WECチームを率いる村田久武代表(写真は2020年)
トヨタGAZOO Racing・WECチームを率いる村田久武代表(写真は2020年)

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