フィロソフィー、貫通。
わずかなアップデートでTR010の要件をクリア、積み重ねが生んだ「究極形の先の先」
キャリーオーバー。このひとことに、レイズ製ホイールのデフォルトのパフォーマンスレベルの高さが表れていると言っても過言ではないだろう。
2026年のル・マン24時間レースをトヨタTR010ハイブリッドの7号車が制した。トヨタは今季のWEC、特にル・マンに向けて主に空力特性を見直し、先代GR010ハイブリッドから仕様を大幅に変更。開幕戦イモラでも8号車が優勝するなど、戦闘力を大きく引き上げることに成功した。
レイズは15年からトヨタ・レーシング(25年まではトヨタ・ガズー・レーシング)のWECプロジェクトにホイールを供給している。だが、TR010用ホイール開発では、GR010用からのマイナーアップデートのみで最適化を果たしたというから驚きだ。今季はミシュランが新スペックのタイヤを投入。それにも対応できる懐の広さがあることも2勝で証明された。
もちろん、レイズ製ホイールが現在のパフォーマンスレベルにたどりつくまでにはさまざまなトライがあった。LMP1時代には、剛性確保、規定の表面積確保とドラッグ低減、最低重量7.5㎏に近づけるという難題が課された。これには、10本スポークの開口部を規定ギリギリまで狭小化し、このぶんの重量増を多軸加工機と専用ツールでスポーク裏側を削ることでトータルの軽量化を図った。
専用ツールは、深く削り込める特殊な刃先を協力会社と共同開発。リム周縁部のフェアリングを従来よりも径方向に12㎜拡大しつつ、重量増を抑えた。それがル・マン初優勝の18年のモデル。この時点での究極形でもあったが、これをベースに19、20年は進化版を投入。21年はLMH規定(GR010)に沿って13Jに。22年に向けてはパフォーマンスアップを図るため、タイヤ幅を変更。フロントが12.5J、リヤが14Jに変わることになり、対応がふたたび求められた。
リム幅に応じた規定重量はフロント8.75㎏、リヤ9.25㎏。重さに余裕ができたように思えるが、新たな課題も生まれた。車両重量は1070㎏以上(BoP含む)で、瞬間的にはLMP1と変わらない4Gが出る。リヤは700PS以上を受け止めなければならず、フロントは幅が狭まったなかで4Gを生む転舵に追従する必要があった。
それにはやはり剛性確保が課題となった。特にリヤは幅が広くなったことで、ディスク面とリム部接合面に大きな力がかかる。その剛性アップのためには重量増が必要だった。レイズは同社の20年GT500用ホイールに着目。そのホイールでは軽量化と剛性アップの両立を狙い、スポークの根本部分を正三角形に肉抜きしていた。LMP1~LMHでは丸穴だったが、正三角形にすることで軽量化し、そのぶんを剛性アップに充てて要件を満たした。
GR010はタイヤへの攻撃性の少なさにアドバンテージがあると言われていた。TR010もこれを受け継いでいるように見える。レイズで紡がれるフィロソフィーもまた、26年ル・マン優勝車に宿っていると言えそうだ。


