12月6日、トヨタGAZOO Racingの2022年体制発表会で現役からの完全引退を発表した中嶋一貴氏。その次なるステージはTGR-E副会長就任という、想像のはるか上をいくものだった。

 引退発表の数日後、autosport/autosport webは『ドライバー・中嶋一貴』最後のインタビュー取材を行った。まずは、2012年のスポーツカーデビュー以来、WECやスーパーGTを中心に追い続けてきた編集部員が、“3分前の悲劇”が起きた2016年のル・マン24時間レースを振り返るとともに、その主人公となってしまった一貴本人に、いま改めてあのときのことを聞いた。

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 引退発表から数日、過密スケジュールの合間を縫って都内のスタジオに現れた中嶋一貴は、どこか雰囲気が違っていた。

 その笑顔には安堵感が漂い、世間話の受け答えからして何かが外れたように柔らかい。これまで薄皮のようにまとっていたシリアスな空気は、最前線で戦うアスリートゆえの宿命のようなものだったのか、と気付かされる。

 もちろん、これまでも一貴はメディアフレンドリーなドライバーであり、我々にとっては『取材のしやすい相手』だった。周囲の迷惑にさえならなければ何かを隠すことはしないし、むしろ「この前は喋りすぎて、怒られちゃいました」と言うくらい、本心をあっけらかんと語ってくれるドライバーだった。また、その心中を冷静かつ客観的に言語化する能力にも長けていたように思う。

 サーキットの現場でも、結果の良し悪しにかかわらず、メディア対応は常に“プロ”のそれだった。結果が悪いとき……そう、2016年のル・マン24時間、フィニッシュ3分前で勝利を逃してしまった、あの直後でさえ──。

 いま改めて2016年のあの瞬間を振り返ってほしい、と切り出すと「わりと鮮明に記憶していますね」と一貴は語り始めた。

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