パロウと加藤エンジニアは、その持ち込みセットアップで外さなかったことがポール獲得の大きなポイントとなったが、さらにもうひとつ、今回の鈴鹿に向けてはパロウから特別なリクエストがあったことを加藤エンジニアが明かした。

「ここに来る前に、F1日本GPの(セバスチャン)ベッテルのオンボード映像をアレックスから見せられて『僕はこう走りたいんだ』と言われました。それはF1なんだけど、と思いましたが(苦笑)、鈴鹿でポールポジションを獲得したベッテルの走りを見ながら『ベッテルのクルマの動きはこうだけど、開幕の時の僕らのクルマの動きはこうだったよね』と言われて、たしかにそうだねと。でも、F1マシンなんだけどねと(苦笑)」

 加速パワーが明らかに違い、鈴鹿の走行ラインも違うF1とスーパーフォーミュラを比べることに加藤エンジニアは戸惑いを見せたようだが、それでもパロウが理想としている走り方、クルマの走らせ方のイメージは共有できたという。

「F1マシンなんですけど、彼が求めるイメージがわかりやすかったですし、そのイメージも今回のセットアップに盛り込んで持ってきています。本人も『F1マシンだけどね』と言って僕も笑っちゃいましたけど、いずれにしても彼は研究熱心というか、常にクルマやレースのことを話していますね」と加藤エンジニア。

 話から推測するに、フロントの回頭性の高いマシンをパロウは求めているようだが、いずれにしても、パロウの勤勉さと加藤エンジニアとの信頼の高さが伺えるエピソードだ。

 とはいえ、現実に目を移せば、今年のスーパーフォーミュラではポールシッターが勝った回数は6戦中、第3戦SUGOと第4戦富士のわずか2回。ポールスタートはソフトタイヤで逃げる展開でレース終盤にミディアムタイヤに交換する戦略が理想だが、セーフティカーが序盤に入ってしまうと展開は逆転。スタートでミディアムタイヤを選択して早めにピットインしてソフトタイヤで走り続けたマシンが先行する、というパターンが今年のスーパーフォーミュラの定石となっている。

 とは言っても、スタートでポールポジションのマシンがミディアムタイヤでスタートすれば、ソフトタイヤでスタートしたマシンに序盤で交わされやすくなるため、スタートタイヤの選択は、レースを戦う上での大きなポイントとなる。どのドライバーも同じ条件だが、ポールはリスクを取りづらい立場になる難しさがある。

「決勝については材料は揃っていますので、どう組み立てるかですね。後ろを見るというよりは、まずはこのレースに勝ちたい。チャンピオンシップもトップとはまだポイント差がありますから勝たなきゃいけない立場です」と加藤エンジニア。

「僕自身もまだエンジニアの経験が浅いなかでチャンピオン争いができるので、アレックスも含めて、チャレンジャーという気持ちで楽しんでベストを尽くすことが出来ればいいかなと思っています。経験は浅いですが、自分たちがやっていることに対しては間違っていないという自信はありますので、慢心せずにやれれば結果は付いてくると思います」
 
 これまでデータエンジニアとして経験を積んでいた加藤エンジニアだが、トラックエンジニアとしては3年目。パロウは今年のスーパーフォーミュラ1年目で、フォーミュラ・ニッポン時代を含めてルーキーイヤーでチャンピオンとなったのは、1996年のラルフ・シューマッハーまで遡るというから、パロウが今年タイトルを獲得すれば23年ぶりの快挙となる。

 1年目のパロウとトラックエンジニア3年目の加藤エンジニアが今年、日本のモータースポーツに大きなインパクトを残そうとしている。

2019年F1第17戦日本GP セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
2019年F1第17戦日本GP セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)

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