またこの4年間、実はケビンとロマンの仲は特に良くなかったのです。でもバーレーンでロマンがクラッシュした時、ケビンは心の底からロマンのことを心配していて、レース後に僕が病院行くと言ったら、ケビンも「絶対に僕も行く」と一緒に来てくれました。ロマンの顔を見て「お前が生きているのが信じられない」と本当に嬉しそうにしていました。
ロマンが退院した後は一緒に食事をしたりもして、その時の写真がSNSにも載っていました。ロマンも初めてケビンのことを友達だと言っていましたよ。今までお互いプッシュし合ってきて、性格も全然違うしあまり仲良くなかったけれど、あの一件を機に距離が縮まって、お互いを尊敬するようになったと思います。ロマンもケビンが本当はいい奴だと身に染みてわかったのでしょうね。こんなひどい事故がきっかけというのも皮肉ですけど、「今のロマンとケビンの関係はすごくいいよね」とケビンのマネージャーも次のレースの時に言っていました。
僕はケビンとサーキット以外の場所で会うことはあまりなかったのですが、最後にひとつ楽しかったエピソードをご紹介します。これもバーレーンでのことなのですが、チームのみんなでカート場に行きました。予選をやって、1レース目はケビンがポールポジションから優勝し、2位にはケビンのマネージャー(元ドライバーです)、僕が3位になりました。お互い真面目に勝負していたわけではなかったので、たとえばコースの外にわざと膨らんでから突っ込んで来たりと、最初はふざけていましたけど、残り5周くらいになって真面目に走ったら、やっぱりレンタルカートはいえ全然ついていけなかったです。
2レース目は優勝したケビンが最後尾からスタート、ケビンのマネージャーが最後尾から2番目、僕が最後尾から3番目とリバースグリッドでスタートしたのですが、シグナルがグリーンに変わった瞬間に、最後尾のケビンはなんと僕の真横にいました。もちろん彼は最初からジャンプスタートをするつもりだったようで、僕が「お前、すごい勢いでジャンプスタートしたな」と言ったら「当たり前だよ!」なんて言っていました(笑)。結果は結局1レース目と同じでした。
こうやってずるをして人を出し抜くことを考えているようなやんちゃな一面もあれば、実はいつもデンマークにいる母親のことを心配している一面もあります。そういう大人っぽい部分も兼ね備えた、本当にかわいくていいヤツです。これからの新しい挑戦で、また本当に大好きなレースを楽しんでもらいたいと思うし、勝ってくれることを願っています。