──今井さんはコロナ前にお会いしたときはチームレースエンジニアでしたが、いまの役職は?
今井:昨年から、ダイレクターレースエンジニアリングになりました。
──組織でいうとチーム代表のザイドルがいて、その次にレーシングダイレクターのアンドレア・ステラがいて、その次になるわけですか?
今井:そうですね。

──これは少し伺いづらいのですが、日本のファンを代表して聞きます。マクラーレンは2017年までホンダと組んで苦しい経験をしました。いまはそのホンダがレッドブルと組んでチャンピオン争いをしています。しかしながら、ホンダのスタッフはいまでも「マクラーレン時代があったからいまがある」と言っています。マクラーレンにとって、ホンダと組んだ3年間はどんな時間でした?
今井:我々も勉強させてもらいました。特にパワーユニット(PU)に関しては密接に仕事をしていたので、ホンダのみなさんにそう言ってもらえるのはうれしいですし、僕らとしてもいろいろと勉強したところはあります。そのあとルノーのPUを使って、現在はメルセデスのPUで、いま我々はおそらくそれなりに(PUに関して)理解度があると思っているのですが、それはやっぱりあの時代にいろいろ勉強させてもらったことが効いていると思います。
──記念撮影の後、どこか遠くを見つめていました。何を考えていたのでしょうか。
今井:喜ぶのはいいですけど、ここから学んで、学んだ結果を次に活かしていかないと次がないと思っていました。

──モンツァでは、ずいぶん遅くまでデブリーフィングをしていましたよね。
今井:デブリーフィングの前に、そういうことをみんなに伝えてじっくり話をしたところです。学ばなきゃダメよと。うまくいったからといって同じことが起こることはないので、今日何がよかったか、何が悪かったか、もっとできることはなかったのかを時間をかけてじっくり考えようね、とね。
──ドライバーも残って、一緒にデブリーフィングをしていました。ドライバーからエンジニアに感謝などありましたか?
今井:もちろん(笑)。
──今後のターゲットはなんでしょうか? 今シーズンのチームの最終目標は?
今井:もちろんいいポジションでシーズンを終えたいですが、昨年(コンストラクターズ選手権)3位でしたので、できることならそこで勝負したいです。ただ、今回のレースでコンストラクターズ選手権で逆転したフェラーリもまだ接近しており、かつ今回も非常にいい結果を残しています。したがって、まだまだレースが残っていますので、残り8レース、簡単にはいかないと思います。
──お忙しいなか、突然のインタビューのお願いにも関わらず、ありがとうございました。
今井:では、またソチで。

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今井弘(マクラーレンF1チーム ダイレクターレースエンジニアリング)
2008年までブリヂストンでエンジニアを務め、2009年にマクラーレンへ移籍。その後、マクラーレンでチーフレースエンジニアに抜擢され、2020年から現職に就き、レースチームのトップであるアンドレア・ステラ(レーシングダイレクター)を支えているチームの大黒柱。