エドゥアルド・バリチェロもトラックリミット違反の判定を受けた。もし彼のベストタイムが抹消されていなければ、彼が駆るハート・オブ・レーシングチームの23号車アストンマーティン・バンテージGT3は、クラスポールポジションを獲得できていたはずだった。

 タイム抹消により、このマシンは決勝レースではグリッド4番手からスタートすることになる。

「本当に愚かなことをしてしまった」とバリチェロは振り返る。

「マシンは素晴らしかったし、ラップタイムも良かった。ほんの数センチの判断ミスで、ラップタイムが無効になってしまったんだ。とはいえ、ルールはルールだし、完全に僕のミスだ。チームには本当に申し訳ない。二度とこのようなことが起きないよう、しっかりと分析に取り組むつもりだ」

エドゥアルド・バリチェロ
23号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(ハート・オブ・レーシング・チーム)のエドゥアルド・バリチェロ

 プジョーのチーム代表エマニュエル・エスノーは、前戦バルセロナでWECデビューを果たしたアレックス・クインを、93号車プジョーに引き続き起用する理由について説明した。

 同じく2027年に向けて加入したロバート・シュワルツマンにチャンスを与えるのではなく、クインを継続起用する判断について、エスノーは「アレックスの場合、LMP2からステップアップするにあたってのハードルが、相対的に少し高いと考えている。彼にとって、LMP2チームと比べてより大規模な組織で働くのは、今回が初めての経験だからだ」と説明している。

■2年目に向けたトヨタTR010ハイブリッドの状況は?

 トヨタレーシングのテクニテクニカル・ディレクターであるデビッド・フローリーは、来年、TR010ハイブリッドに対して『エボ・ジョーカー』を行使するかどうかについて明言を避けた。ただし、その可能性を検討していることは示唆した。

 トヨタは2027年末までに使用可能なジョーカーを、少なくとも3回分残しているとみられる。

 フローリーは記者団に対し、次のように語った。

「ジョーカーを用いたホモロゲーション改修プロセスは非常に包括的なものであり、一定期間内に割り当てられた回数分だけ、すべて無条件に使用できるというわけではない。いかなる改修も、FIA(国際自動車連盟)とACO(フランス西部自動車クラブ)の承認を得る必要がある」

「現時点では、来年に向けたジョーカーの利用についてコメントすることはできない。まだプロセスの途上にあるからだ」

トヨタTR010ハイブリッド
8号車トヨタTR010ハイブリッド(トヨタ・レーシング) 2026年WEC第8戦モンツァ

 一方でフローリーは、引退するマイク・コンウェイの後任と契約したことを認めた。その人物はポルシェのケビン・エストーレであると広く噂されており、彼はふたつの異なるメーカーに所属し、WECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の両シリーズにフル参戦するという、異例のプログラムに臨む見込みである。

■アストンマーティンの来季ドライバーラインアップ

 アストンマーティン陣営のハート・オブ・レーシングチームの代表イアン・ジェームズは、WECとウェザーテック選手権におけるドライバーラインアップに変更はない見通しだと語った。しかし、WECとIMSAのGTPクラスのレース日程が重複していないことから、ドライバーのひとりが両シリーズにフル参戦する可能性も残されていることを認めた。

 現時点では、キャデラックやBMWが、両選手権においてドライバーをフル参戦させる体制を継続する予定だ。ジェームズは「常に選択肢の一つとして検討している」と述べた。

「こうしたマシンで実際にコースを走る経験は非常に重要だ。走行距離を重ねれば重ねるほど良い。現時点では、あらゆる可能性が検討段階にある」

 ジェームズ自身は、来年もWECのLMGT3クラスにアストンマーティン・バンンテージGT3でドライバーとして参戦する「可能性が高い」と語り、現役引退については「まだその時ではない」とした。ブロンズ・ドライバーである彼は、近年何度か引退を検討したこともあったが、その速さを評価したチームから現役続行を強く勧められたという。

■「もう少し遅い方がありがたかった」アジアン・ル・マン開幕

 ハート・オブ・レーシングは、来週末にル・カステレ(ポール・リカール・サーキット)で開催されるアジアン・ル・マン・シリーズの開幕ラウンドに向け、モンツァ明けの月曜日には現地へ向かう予定のチームのひとつである。

「かなり厳しい戦いになると思う」とジェームズは語った。

「誰かが圧倒的に独走するような展開にはならないはずだ。面白いレースになるだろうし、悪天候に見舞われることも予想されるので、ある意味、良い予行演習になるかもしれない」

 マッキントッシュやマックス・ヘッセとともにチームWRTのBMWを駆るパーカー・トンプソンは、アジアン・ル・マンについて次のように付け加えた。

「楽しみにしているか? もちろん、100%だ。もっと遅い時期に開幕してほしかったか? それも100%だ。メカニックやドライバーを含め、今年すでに20回以上のレースウイークをこなしてきたメンバーにとっては、開幕がもう少し遅い方がありがたかったね」

 トンプソンは、このシリーズがこれまで提供してきたような、暖かな気候が恋しくなると認めた。中東の地政学的な状況を考慮し、今シーズンの全3ラウンドはヨーロッパ内で開催されることになっている。

「今朝、トニー(マッキントッシュ)と『ドバイの気候や、あの心地よい天気が恋しいね』と話していたんんだ」と彼は語った。

 また、今シーズンのWECで見られたような、ラウンドごとにカラーリングを変更する手法とは異なり、マッキントッシュのチームは2026/27年シーズンのアジア・キャンペーンを通じて一貫したデザインを採用する予定だ。

BMW M4 GT3エボ
8つ目の特別カラーをまとう69号車BMW M4 LMGT3(チームWRT) 2026年WEC第8戦モンツァ

■エンジン故障で親子共演ならず

 土曜日に行われたサポートレース『レジェンズ・オブ・ル・マン』の第1レースは、クリストフ・ダネスンブールが駆る15号車オーク・ペスカローロと、マルセル・アエビが駆るローラB06/10が絡む大きな事故が発生し、開始から26分で打ち切りとなった。両ドライバーとも、自力でマシンから脱出した模様だ。このレースでは、2008年型プジョー908 HDi FAPを駆ったキートン・レンドゥディスが勝者と宣言された。

 第2レースでは、クリスチャン・アルブレヒトが駆る008号車ローラ・アストンマーティンが勝利を収めた。このレースには、かつてのLMP1やLMP2マシン(フランソワ・ペロードのポルシェRSスパイダーや、リジェ・オートモーティブ社長ジャック・ニコレのリジェJS P2など)に加え、GTマシンも数台参戦しており、その中にはホルスト・フェルバーマイヤーがステアリングを握る、プロトン・コンペティション運営の2017年型ポルシェ911 RSRも含まれていた。

 かつてル・マンで総合表彰台に立った経験を持つデビッド・チェンは、グリーブス・モータースポーツのギブソン015 Sで参戦する予定だったが、ギヤボックスのトラブルに見舞われ、期限までに代替部品を調達することができなかった。

 アルピーヌA424をドライブするシャルル・ミレッシの父・パトリスは、シューマッハー/IMSAからエントリーされたポルシェ911 RSRをドライブする予定だった。しかし、フリープラクティス1でシャルルがステアリングを握っていた際、エンジンが故障してしまい、走行はそこで終了となった。

 パトリスは2013年のELMSに参戦したほか、同年のル・マン24時間レースにもIMSAパフォーマンス・マットミュートからポルシェを駆って出場している。

「僕が乗っている時に4周でエンジンが壊れてしまったので、決して理想的な状況とは言えない」とシャルル。

「父も間違いなくドライブを楽しみにしていたはずだ。ただ、今回のコンディションを考えると、ある意味では少しホッとしている部分もあるのかもしれない。父は13〜14年もレースから遠ざかっていたし、このコンディションで走るのは簡単ではなかったはずだから。ドライブしなくて済んだことには少し安堵しているようだけど、エンジンが壊れてしまったのは、やはり望ましいことではないね」

シャルル・ミレッシ
35号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)のシャルル・ミレッシ 2026年WEC第8戦モンツァ

 2026最終戦の6時間レースは、11月8日(日)の現地時間11時(日本時間19時)にスタートが切られる予定だ。

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