上野取締役は、JRPで働く前に、鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎを運営する株式会社モビリティランドに所属していた。モビリティランドでは広報の責任者として、スーパーフォーミュラの魅力を伝え、ファンをサーキットに呼び込む立場だったのだ。
オーガナイザー側からプロモーター側へと立場が変わったということは、オーガナイザーがレースを開催するにあたり、プロモーターに対して何を求めているのかを知っているということだ。この点は、プロモーターとして働くうえで大きな利点になるという。
「先ほどスーパーフォーミュラを“商品”とたとえましたが、この商品の価値が非常に重要になります。この商品はお客様を1万人呼べるのか、2万人呼べるのか、あるいは10万人呼べるのか。商品の価値を上げて欲しいと思っていた立場から、上げなければならない立場に変わりました」
「お客様やスポンサーに直接“商品”を売るのはオーガナイザーであり、チームです。そのために、より良いマシンの提供やテレビ放送の拡充を中心に認知度を高め、それぞれがビジネスを展開しやすい環境を作ることが重要ですね」
■情報開示の重要性
とはいえスーパーフォーミュラという商品の価値を上げていくなかで、予期せぬ出来事によってその努力が水の泡となることもある。
その例となったのが、今年の第2戦オートポリスと第3戦スポーツランドSUGOでの予選だ。オートポリスでは、悪天候のなか計時セッションで行われた予選が3度の赤旗中断の末、一切の説明がなされずに終了。SUGOでも予選Q3が1分24秒を残して赤旗のまま終了となり、大きな混乱を招いた。
「(オートポリスとSUGOで)あのような混乱を招いてしまった原因のひとつは、我々が決断に至った経緯を伝えられなかったこと。なぜオートポリスでは予選を終了したのか、どうしてSUGOではセッションを延長しなかったのかということをきちんと説明せず、コントロールタワーのなかだけで完結してしまったことに課題がありました」
「今ではSNSなどを含めてお客様に情報をお伝えする方法はありますし、様々なツールを駆使してしっかりと経緯を説明するべきであったと考えています。このような情報の開示も、シリーズの価値を上げるためには重要な時代かもしれません」
SUGO大会の予選後には、JRPからメディア向けに予選終了の経緯を記したプレスリリースが発表された。上野取締役によれば、このリリースの発表はオートポリス大会の反省を踏まえたものでもあったという。スーパーフォーミュラにとっても、大きな一歩となったことだろう。
