2025 AUTOBACS SUPER GT Round1
開催地:岡山国際サーキット(岡山県)/3.703km

4月12日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:8700人
4月13日(決勝)天候:雨/曇り コースコンディション:ウエット/ドライ 観客数:14500人

トラブルから始まり、本来のポテンシャルを発揮できず。この経験を糧にする

 2025年シーズン、31号車apr LC500h GTは新しいふたりのドライバーを迎え入れた。WEC(世界耐久選手権)でハイパーカーやLMP2もドライブしてきたデンマーク出身のオリバー・ラスムッセンと、2022年のフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップでチャンピオンに輝いた小山美姫だ。そして、apr LC500h GTの初年度からステアリングを握る根本悠生が今季も第3ドライバーを務める。

 今季、GT300ではレギュレーションの一部に改定があった。速度抑制策として昨季導入された追加重量を撤廃し、サクセスウエイトが50kgを超えた場合は給油流量リストリクター径を調整することで給油時間によるハンディキャップをつけるようにした。

 また、GTA-GT300車両においては、フロントタイヤが幅・外径ともに30mm縮小された。apr LC500h GTはジオメトリーの調整範囲内でこれに対応でき、車両を大きく仕様変更する必要はなく、細部の見直しによる軽量化と前後重量配分の最適化というのが今季に向けたアップデート。ただし、ハイブリッドシステムは新システムを導入し、新たな挑戦と開発を担っていく。

 なお、ラスムッセンは今季デビューしたスーパーフォーミュラの第1戦&第2戦鈴鹿の初日フリー走行1回目(3月7日)にクラッシュした影響で療養中のため、開幕戦岡山では小山と根本がドライブすることになった。

公式練習/28位 4月12日(土)9:30〜11:15

 公式練習、31号車は制御系のトラブルによりガレージでの作業を余儀なくされた。コースに送り出せたのは、開始から約50分後のことだった。

 まずは小山がステアリングを握る。公式練習の気温は15℃と、昨年と比べて5℃も低い。持ち込んだタイヤが硬めだったこともあり、小山はアウトラップのヘアピンでスピン。しかしコース上にとどまり、そのまま走行を続けて6周でピットに戻る。

 そこからは根本がステアリングを握る。だが、小山同様になかなかタイムが上がらない。これまでのオフシーズンテストは雨が多く、そのなかでもステップアップしていったセッティングからコンディションに合わせてアジャストしたものをベースセッティングとしていたが、それがマッチしていない。

 岡山はもともと路面コンディションが変化しやすいサーキットだが、他車の走行周回が増え、CNF(カーボン・ニュートラル・フューエル)のブローバイガスが路面に載ってグリップダウンしていたことも影響したようだ。

 ピットインを繰り返してセッティングを修正していくが時間が足りず、タイムはトップから3.484秒遅れの1分28秒692で最下位。不安を抱えながら予選に臨むことになってしまった。

公式予選4月13日(土)

Q1A/8位 14:00〜14:10
Q2/18位 14:53〜15:03

 今季の予選フォーマットは、昨季のQ1/Q2タイム合算方式ではなく、2023年までのノックアウト方式に戻された。それに加えてQ1は2組みに分けられ、1台増の上位9台がQ2に進出できる。

 Q1はA組に出走。トラブルで公式練習の時間を失い、セッティングを詰めることができなかった31号車はFCY練習の走行枠を利用し、LC500hで過去3年間戦ってきたバックデータをもとにしたセッティングに戻すことにした。Q1のコンディションにマッチしているかは疑問が残るが、LC500hを知り尽くし、開発能力も高い根本にステアリングを託す。

 そして根本が期待に応え、計測6周目に記録した1分26秒543が8番手タイムとなりQ1突破。根本のインフォメーションから、Q2に向けてコンディションに合わせるべくセッティングをアジャストする。

 Q2の小山も計測6周目にアタック。1分25秒981はQ1から0.5秒以上のタイムアップだった。しかし、今回はトラックエボリューションが激しく、ライバルの伸び代のほうが大きかった。トップから1.561秒遅れの18番手で予選を終えることになった。

小山美姫選手

「公式練習での走り出しは、それまでのテストで良かったイメージも要素も全然ない状況でした。予選Q2のフィーリングは悪くなかったのですが、自分の部分でまだまだ詰め切れていないところがたくさんあったと思います。スーパーGTでブリヂストンタイヤを履くのは今年が初めてで、ウォームアップの仕方、ピークグリップの使い方など、タイヤへの理解もまだ足りていなかったなという感じです」

根本悠生選手

「オフシーズンのテストは良くて、好感触で開幕戦を迎えられたのですが、公式練習ではタイヤをまったく使えていないような感じでしたね。何が違うのか探るには時間が足りませんでした。今年はテストからニュータイヤでのアタック経験を積ませてもらっていたので予選には自信を持っていたのですが、Q2に堅実に進むことを意識しました。クルマなりにベストを尽くせたかなと思いますが、本来のポテンシャルとしてはもっと上を狙えたはずで、不完全燃焼の予選になってしまいました」

金曽裕人監督

「持ち込みのセッティングを外してしまっても、いつもならそこから修正していくのですが、公式練習で50分ロスしたのが響きました。予選Q1は過去のバックデータをもとにしたセッティングで、コンディションにマッチしていたわけではいけど根本選手がなんとか突破してくれました。Q2に向けては根本選手からのフィードバックでセッティングをアジャストしましたが、もっとやれることはあったし、それができていれば小山選手ももっと上位にいけたはず。経験が少ないなかでいきなりQ2というのは、ちょっと酷でしたね」

決勝レース(79周)/22位 4月13日(日)13:10〜

 決勝日は雨で、レース後半には雨が上がる予報となっていた。前日にセッティングを詰め切れなかった31号車は、スタート進行直前の20分間のウォームアップを使ってそれを取り戻すべく、短い時間のなかでベストを探っていく。レース後半のコンディション変化を見据え、ウエットとドライの中間を狙ってセッティングをアジャストした。

 決勝は雨のためセーフティカー(SC)先導でスタート。第1スティント担当は根本だ。そのSC先導中の4周目、ヘアピンでスピンを喫する。硬めのウエットタイヤを装着していたこともあり、コールドタイヤで足をすくわれてしまった。最後尾に落ち、翌5周目にスタートが切られた。

 しかしその直後、GT500で多重クラッシュが発生。SC導入から赤旗中断になる。約30分後にレースが再開されると、根本はじっくりとタイヤを温めていった。SC中のスピンにより12周目にはドライブスルーペナルティを消化することになるが、根本はハイペースでオーバーテイクを続けていく。ピットタイミングの違いもあるが、11番手を走行する44周目、根本はルーティンピットに入った。

 硬めのウエットタイヤはグリップダウンすることなく、タイヤ無交換で小山をコースに送り出す。小山は19番手でコースに戻ったが、すでに熱の入ったタイヤはウォームアップを必要とせず、小山も順位を上げていった。それと同時に雨が止み、コースがドライアップしていくなかでスリックタイヤに履き替えるチームも増え出す。

 小山は53周目、7番手走行からピットに入りスリックタイヤに交換。だが、皮むきしていないニュータイヤを投入した影響と制御系の切り替えが出来ておらず、タイヤの温めに時間がかかって順位を落とし、その後のSCのタイミングも悪く上位陣から周回遅れになってしまった。

 ドライコンディションになってからの小山のベストラップは上位勢と遜色のないタイムを記録したが、その直後に左リヤに接触されて破損したパーツがタイヤに干渉するトラブルが発生。グリップに違和感がありペースを保てず、順位を上げられないまま22位でチェッカーを受けた。

 開幕戦岡山は走り出しからトラブルに見舞われ、決勝はSC4回、FCY(フルコースイエロー)2回、赤旗1回と荒れた展開になるなど、期待していた結果を残すことはできなかった。しかし、決勝中はウエットでもドライでも上位勢と戦えるポテンシャルがあったのも事実。これを糧に、ラスムッセンが復帰予定の第2戦富士で巻き返しを誓う。

小山美姫選手

「ウエットでもドライでもペースはすごく良かったと思います。ただ、これまでにダンプコンディションでドライのニュータイヤを履くシチュエーションが一度もなく、アウトラップに大きな課題が残りました。LC500hはハイブリッドの調整もあるので、そこも慣れないといけないですね。もう本番なのであまり失敗はできないですが、失敗したぶんだけ自分の知識と経験が増えたので、それを今後に活かして自分の走りを磨いていきたいと思います」

根本悠生選手

「SCスタートという超低速のなかでタイヤのウォームアップをやったことがなく、自分の感覚とは違っていてスピンしてしまいました。自分のミスなのでしっかりと反省し、次につなげていけるようにします。タイヤが温まってからのペースは良く、ウエットコンディションではLC500hの武器、ロングホイールの安定感もあってクルマのポテンシャルを最大限発揮することができたと思います。個人的にも良い走りができていました。だからこそ、ミスはチームに申し訳なかったです」

金曽裕人監督

「結果論としては、根本選手の第1スティントをもっと引っ張って、スリックタイヤに交換するタイミングで小山選手に交代するのがベストなストラテジーでしたね。そうすれば上位に入賞できていたレースでした。根本選手のスピンと小山選手のアウトラップは経験不足が大きな原因。いきなり高いところは求めていないが、次戦ではシチュエーションに対する順応性をもっと強化します。ブリヂストンタイヤのパフォーマンス、LC500hのパフォーマンスはもっと先にありますので」

根本悠生/小山美姫
根本悠生/小山美姫(apr LC500h GT) 2025スーパーGT第1戦岡山

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