1992年シーズンのF1開幕を迎えたとき、ミケーレ・アルボレートは35歳。ぼちぼち引退の文字がチラつく時期だった。グランプリウイナーといえど、前年に7度も予選落ちを喫していれば、世間からの風当たりも厳しい。「賞味期限切れ」、「時代後れ」、それが1992年のF1開幕戦時点での世の中の正直なアルボレート評だった。
しかし、当の本人はそんなこと微塵も感じていない。クルマが悪いのだからそれ以上やりようがない。自分だってマクラーレンやウイリアムズに乗ることができれば、アイルトン・セナやナイジェル・マンセルと変わらぬパフォーマンスを示せる──まだ錆びついてなどいない。
鳴かず飛ばずのポルシェV12に苦しめられ、走ることもままならない状況だった1991年シーズンに比べれば、1992年は天と地ほどの差がある。チャンピオンエンジンのDNAを継ぐ、無限ホンダV10に大きな期待を寄せた──また、戦える。
