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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2021.07.12 12:12
更新日: 2021.07.13 12:03

プジョー&フェラーリがル・マン復帰。北米進出も叶うハイパーカー【スポーツカー新規定おさらいLMH編】

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ル・マン/WEC | プジョー&フェラーリがル・マン復帰。北米進出も叶うハイパーカー【スポーツカー新規定おさらいLMH編】

 LMHの初期案では、同規定が2020/21年シーズンから採用されることになっていた。しかし、新型コロナウイルスの影響によって選手権のスケジュールが変更されたこともあり、その導入は2021年の“シーズン9”からとなった。この間、WECの新規定は前述のベース車にかかる規定変更を含め複数回の改定が行われ、車両スペックもその都度変更されてきた。

 当初の案では、ル・マンでの想定ラップタイムが予選で3分20秒とされていたが、現在は3分30秒へと下方修正されている。また、初期の案では空力開発が可能なエリアを制限するとしていたが、これは2019年の規則概要発表時に量産ハイブリッド・パワーユニット(エンジン+MGU-K)の搭載義務とともに撤廃された。また、この段階でノンハイブリッド車両の参戦も認められている。

 ハイブリッドシステムについてはLMP1-H時代に可能だった電動モーターでの4輪力行が禁止され、ドライタイヤ使用時は120km/hから、ウエット路面時は140km/h以上で前輪のみを駆動させるスタイルに変更。モーター出力と回生は200kWに制限され、MGUの搭載位置はフロントのみ可となっている。

 エンジンは形式・排気量とともに規制はなく、規則上はロータリーエンジンでの参戦も可能だ。一方、認められるのはガソリンエンジンのみで、かつてアウディとプジョーが採用したディーゼルエンジンは使用できない。最高出力は19年の発表時には585kW(約795PS)とされていたが、翌2020年1月に発表されたLMDhに合わせるかたちで規則変更が行われ、500kW(約680PS)に改められた

■ボディサイズは大型化。エアロは通年1種類

 パワーユニットの合計最大出力が旧規定の735kWから500kWに削減されるなか、シャシーはLMP1カーと比べて大型化。最大寸法は全長5000mm、全幅2000mm、全高1150mmといずれも上限値が拡大された。ホイールベースは最大3150mmとされ、最低重量は初期案の1100kgから70kg少ない1030kgに落ち着いている。これらの数値はいずれもLMDhのスペックと同じ数値だ。

 この他のLMHの特徴としては、LMGTEプロクラスでも用いられている、AI(人工知能)を使ったオートマチックBoPで車両間のパフォーマンスをコントロールする点や、コスト削減の観点から年間を通じてひとつのエアロパッケージを使用することが挙げられる。

 これにより、これまで見られてきた通常のサーキット用のハイダウンフォース仕様と、ル・マン用とローダウンフォース仕様の使い分けができなくなっている。その空力規定では、ダウンフォースとドラッグの比率で示される空力効率(L/D)を規定の枠内に収める必要がある。

 今月8日、両規定の“コンバージェンス”に向けたレギュレーション改正がWMSC世界モータースポーツ評議会で承認され、タイヤ、加速プロファイル、ブレーキ性能、空力という4つの主要な領域の調整を行うことでWECだけでなく、デイトナ24時間やセブリング12時間といった伝統ある耐久レースを抱えるウェザーテック・スポーツカー選手権にも、2023年シーズンから出場できることになったLMH。

 新規定の正式採用やシリーズ間での相互参戦の実現までには紆余曲折を経たが、ハイパーカークラスのデビューイヤーにグリッケンハウスの新規参戦が実現したことや、将来トヨタのライバルとなるプジョーやバイコレス、23年に参入予定のフェラーリをプロトタイプ・スポーツカーレースに復帰させるなど、すでに大きな役割を果たしていると言えるだろう。

 IMSAが運営する北米シリーズとの相互参戦が実現した暁には、23年にLMDhプログラムを開始するポルシェが2台体制でWECに参戦することを発表しており、ハイパーカーとLMDhが同じ土俵でバトルを繰り広げることになる。これはル・マンの総合優勝を懸け、ふたたび多数の自動車メーカーがトップカテゴリーを戦うことを意味する。その光景が見られる日が待ち遠しい。

■WECに参戦するハイパーカーの主要諸元

トヨタGR010ハイブリッド グリッケンハウス007 LMH プジョー9X8
全長 4900mm 5000mm
全幅 2000mm 2080mm
全高 1150mm 1180mm
ホイールベース 3045mm
車重 1040kg
ハイブリッド あり なし あり
ハイブリッド出力 200kW 200kW
エンジン 3.5L V6ツインターボ 3.5L V8ツインターボ 2.6L V6ツインターボ
エンジン出力 500kW 500kW 500kW
タイヤサイズ 31/71-18 29/71-18(前輪)
34/71-18(後輪)

開幕戦をスキップし、2021年シーズンの第2戦ポルティマオから参戦を開始したグリッケンハウス007 LMH
開幕戦をスキップし、2021年シーズンの第2戦ポルティマオから参戦を開始したグリッケンハウス007 LMH
2022年のWEC参戦を目指すバイコレスが発表した『PMCプロジェクトLMH』
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LMHのタイヤはミシュランの1社供給で、前後31/71-18のタイプと、フロント29/71-18/リヤ34/71-18の2スペックが用意されている
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グリッケンハウス007 LMHは前後で異なるサイズのタイヤを装着している
グリッケンハウス007 LMHは前後で異なるサイズのタイヤを装着している

2021年7月6日に発表されたプジョーのル・マン・ハイパーカー『9X8』
7月6日に発表されたプジョー9X8の全幅は、規定にある最大2000mmを80mmオーバーしている


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