そして、今回のアブダビGPでDAZN JapanによるF1中継が区切りを迎えました。2016年夏のベルギーGPから約10シーズンにわたり、解説を務めさせていただきました。レーシングドライバーとは違った立場でF1を見る・伝える機会をいただき、私にとっても大変ありがたい時間でした。

 解説者という外側のポジションからF1を見ることで、新たにたくさんのことを学ぶことができました。番組という物を作り上げていくプロセスはF1やモータースポーツの世界と同じで、大勢の人たちがチームを組んで、ひとりひとりの活躍のおかげで素晴らしい物が生み出されます。個人的に、こういったプロセスをモータースポーツ以外の分野で経験したことは、初めてでした。

DAZNが配信を行う『WEDNESDAY F1 TIME』2023年第1回目に出演したサッシャ氏、中野信治氏、笹原右京、松下信治
DAZNが配信を行う『WEDNESDAY F1 TIME』2023年第1回目に出演したサッシャ氏、中野信治氏、笹原右京、松下信治

 解説者として、自分の仕事に完璧に満足しているわけではありません。もっと上手く、わかりやすくお伝えすることができたのではないかなど、今でも自分のなかにさまざまな想いがあります。私がF1解説を通じてやりたかったことは、F1やモータースポーツの楽しさをお伝えすることで、それを念頭に置いて解説を務めさせて頂きました。

 F1はビギナーの方にとってときに難しく感じたり、わかりにくいと感じる部分があります。まずはビギナーの方にもF1に興味を持って頂き、楽しんでいただくために、極力難しいことは話さない。長年の経験でレースの展開や戦略の予想が序盤にできてしまった場合でも、あまり早いタイミングで戦略予想をお伝えしないようといったことは、常に意識していました。

 わかりやすく、F1の楽しさをお伝えすること。それは2016年にDAZN JapanさんとF1中継を始める際に、一緒に話し合って決めたスタイルでした。そのスタイルは10シーズン変えることなく続けてきました。中継や番組を通じて、私たちの想いがみなさんに伝わっていたかは定かではありませんが、DAZNでの中継や番組を通じてF1を楽しみ、さらにF1を好きになってくださっていたら幸いです。

アルファタウリからF1に参戦する角田裕毅が描かれた『WEDNESDAY F1 TIME』の台本
当時アルファタウリからF1に参戦していた角田裕毅が描かれた『WEDNESDAY F1 TIME』2023年第1回目の台本

 解説という経験をさせて頂いたことに対し、中継や番組を見てくださったみなさん、そしてDAZN Japanさんへの感謝の思いでいっぱいです。本当にありがとうございました。また、長らくご一緒させて頂いたサッシャさんとも凄く良い関係を築くことができ、本当に楽しい時間を過ごせました。約10年間の解説で得た経験を、何かに繋げる機会があれば良いなと思います。

 さて、2026年は車両レギュレーションが大幅に変わり、F1は新たな時代を迎えます。『アクティブ・エアロダイナミクス』を搭載したF1マシンがどのような挙動を見せるのかは、早く見てみたいですね。2025年までのF1マシンの最大の課題はオーバーテイクが難しいという点でした。さまざまな変更点がありますが、そのほとんどがオーバーテイクしやすいクルマへと改善する内容で、F1とFIA国際自動車連盟が課題に対する答えをすべて盛り込んだレギュレーションだなという印象です。良い変化がF1に訪れるのではないかと感じています。

2026年F1マシンのレンダリング画像
FIAが発表した2026年F1マシンのレンダリング画像

【プロフィール】中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。

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