2025 AUTOBACS SUPER GT Round3
SUPER GT MALAYSIA FESTIVAL 2025
会期:2025年6月26日(木)〜28日(土)
場所:セパン・インターナショナル・サーキット(マレーシア)
観客:予選2万8524人 決勝4万7453人
予選:8位
決勝:3位
獲得ポイント:ドライバー:16Pts/チーム:19Pts
シリーズ順位:ドライバー:谷口・片岡8位(21Pts)/中山・奥本13位(16Pts)/チーム2位(45Pts)
2013年以来12年ぶりに、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットでスーパーGTが開催された。
今大会は、グッドスマイルレーシングが6年ぶりに挑むスパ24時間レースと日程が重なったため、レギュラードライバーの谷口信輝選手と片岡龍也選手に代わり、2013年のGT300チャンピオンドライバーである中山友貴選手と、今大会がスーパーGTデビューレースとなる奥本隼士選手というラインナップで挑む。
そして、監督は片山右京氏に代わり、今大会は番場琢氏がチームの采配を振るう。番場琢氏は、2011年にグッドスマイルレーシングがこのセパン・インターナショナル・サーキットで初優勝し、その年のチャンピオンを獲得した際のドライバーだ。
このサーキットでの公式戦は2013年以来となり、未経験のドライバーも多いため、26日(木)の夕方に80分、27日(金)の午前に60分と、計2回の公式練習が設定された。また、レース距離は300kmだが、公式練習が2回あることから持ち込めるドライタイヤが4セットから5セットに変更された。
参戦台数はピット数の影響でGT500が15台、GT300はAシード17台にワイルドカードの2台を加えた19台で争われる。そして、日中の酷暑を避けるため、公式予選と決勝はともに午後4時30分から行われる。
今大会のメルセデスAMG GT3のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)は、基本重量1280kgに加えて60kgが搭載され、1345kgとクラス最重量のマシンとなる。そして、エンジンパワーを制限するエアリストリクターは、富士スピードウェイで使用したφ35.0からφ34.5に戻された。
6月26日(木)公式練習1
午後4時、1回目の公式練習が始まると、まずは奥本選手が4号車グッドスマイル 初音ミク AMGに乗り込み、コースへと向かう。序盤は路面状況が良くないと予想されたため、無線とマシンの感触を確認して一度ピットへと戻った。
数分ピットで待機した後、再びコースイン。ドライバーは奥本選手のまま、最初のアタックで2分4秒345を記録し、いきなりその時点のトップに立った。マシンバランスは良く、幸先の良いスタートとなった。
そして、12周を走行したところで中山選手へと交代。中山選手はマシンのバランスを確認しつつ、連続周回でロングランのテストを行う。ライバルたちがピットインを繰り返してセッティングを見直す中、順調に決勝レースへの準備を進めた。
午後5時30分からのGT300専有時間も、続けて周回を重ねる。専有走行でニュータイヤを投入してタイムを更新してきたチームもいたため、最終的にベストタイムは4番手となったが、期待の持てる走り出しとなった。
6月27日(金)公式練習2/公式予選
天候:Q1/Q2:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度
Q1開始時:33℃/40℃
Q2開始時:31℃/38℃
終了時31℃/36℃。
午前10時、2回目の公式練習が開始。このセッションでは中山選手がマシンに乗り込み、まずは前日に使用したタイヤでマシンと路面の確認から始めた。
4周を走行したところで一度ピットへ戻り、この週末で2セット目となるタイヤを装着。 予選を想定して慎重にタイヤの熱入れを行い、アタックに入ると計測3周目に2分4秒519を記録して7番手につける。
そこから2分4秒台を連発し、計測6周目には2分4秒106までタイムを縮めて6番手へ浮上する。2回の公式練習で路面にラバーがのり、コンディションが改善されていることから、さらにセッティングを詰めればタイムアップできそうだという感触を得た。
ここで中山選手はマシンを降り、奥本選手へと交代。燃料を満タンにしてロングランの確認を始める。途中、FCY(フルコースイエロー)テストを挟みながら、2分4秒後半から2分5秒前半で周回を重ねました。周りの燃料の量やタイヤの状況は不明だが、同じタイミングでロングランを行っていたライバルたちよりも1秒近く速いペースだった。
今大会もGT300クラスはランキング順に10台と9台の2組に分けられ、各組上位6台がQ2へと進出する。GOODSMILE RACING & TeamUKYOはA組となり、午前の公式練習で上位だったチームが多く含まれるため、Q1から熾烈な争いが予想された。
午後4時30分、Q1A組の走行から予選が始まった。Q1のアタッカーは、これがスーパーGTで初めての予選となる奥本選手が担当した。奥本選手はセッション開始とともにコースへ進み、タイヤの熱入れを行いながらアタックスペースを確保する。計測3周目に2分3秒940を記録してQ2進出圏内の5番手となるが、ライバルたちもアタックを続ける中、奥本選手も連続アタック。チェッカーラップで2分3秒497を記録して4番手に浮上し、見事Q2進出を決めた。
ピットへ戻ると、Q2に向けてマシンの情報を中山選手や監督、エンジニアにフィードバックを行い、セッティングの調整が施された。
Q2を担当する中山選手は、セッションが開始されるとすぐにコースへ向かい、アタックの準備を進める。タイヤのウォームアップとともにマシンの限界を探り、4周目にアタックを開始するが、7・8コーナーでわずかにラインを外してしまったため、一度アタックを中断し、翌周に賭けることに。
5周目に改めてアタックを開始すると、1周をうまくまとめ、Q1のタイムを上回る2分3秒226を記録して8番手となった。ポールポジションは、コースレコードとなる2分2秒110を記録した18号車のメルセデスAMGが獲得。2番手には52号車、3番手には0号車が続いた。
6月28日(土)決勝
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度
スタート前(16:30)33℃/42℃
序盤(17:00)31℃/39℃
中盤(17:30)31℃/37℃
終盤(18:00)31℃/37℃
ゴール時(18:80)31℃/35℃。以上、現地時間
早朝、サーキット周辺は雷を伴うスコールに見舞われた。しかし、南国特有のスコールのため降雨時間は短く、午後1時からのピットウォークが始まる前には、路面はすでに乾いていた。
午後3時10分から20分間のウォームアップ走行では、それまでの走行で路面にのったラバーが流されたことで、コンディションがどう変化しているかの確認が重要となった。
まずは中山選手が走行し、新品タイヤの皮むきを行い、路面状況と決勝に向けたセッティングの確認を進める。残り約5分となったところで再びピットに入り奥本選手に交代。コースへ入ると路面とマシンの最終確認を行い、決勝に向けて万全の準備を整えた。
地元マレーシアと日本から駆けつけたファンで賑わうグリッドウォークを経て、午後4時30分、決勝レースのフォーメーションラップが始まる。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのスタートドライバーは中山選手が務めた。
2周のフォーメーションラップを経てレースがスタート。2コーナーで7番手スタートの777号車のインに並びかけるものの、切り返しの3コーナーでインとアウトが入れ替わったため前に出ることはできず、8番手をキープする。続く9コーナーでは後方から来た56号車が飛び込んできて先行され、9番手へとポジションを下げてしまった。
しかし8周目、順位を落としてきた61号車を1コーナーでパス。さらに、GT500クラスの先頭車両が追いついてきたタイミングで56号車の前にも出て、7番手に上がった。続いて6番手の777号車とのギャップをじりじりと詰めると、14周目のバックストレートでオーバーテイクに成功した。
次のターゲットである2号車とは約4秒の差があったが、中山選手のほうがペースは良く、その背中が少しずつ大きくなってくる。チームは、このまま2号車とのバトルに突入してペースが落ちることを避け、どこよりも早くピット作業を行うことを決断した。
16周を走り終えたところで中山選手はピットロードへ。奥本選手へとドライバー交代し、給油とタイヤ4本交換を行ってコースへと送り出す。このピットインはどのチームよりも早かったため、奥本選手は前方が空いたスペースでハイペースを刻み、アンダーカットを狙った。
この作戦は狙いどおりに働き、翌周から続々とピットへ向かい始めたライバルたちのうち、2号車と87号車の前に出て4番手に浮上した。さらに3番手を走る0号車よりも4号車の奥本選手のほうがペースは速く、0号車がピット作業を終えた20周目に8秒あったギャップは、28周目には0.6秒差まで縮まり、テール・トゥ・ノーズの戦いが始まった。
奥本選手は何度もオーバーテイクを仕掛けるが、昨年チャンピオンでGT500の経験も豊富な0号車の小暮選手の巧みなブロックに阻まれ、なかなか前に出ることができない。途中、GT500のマシンに抜かれるタイミングをうまく使われてギャップを開けられてしまう場面もあったが、奥本選手は焦らず再びギャップを詰め、バトルを続けた。
そしてチェッカー間近となった47周目、1コーナーでアウト側に並ぶと、切り返しの2コーナーで一気に抜き去り3番手に躍り出た。
ついに表彰台圏内に入った奥本選手は、その後すぐに本来のペースを取り戻すと、後続とのギャップをみるみる広げ、そのまま51周を走り切って3番手でチェッカーを受けた。チームとして今シーズン初の表彰台を獲得し、ファン投票によるベストパフォーマンス賞『J SPORTS賞』も受賞した。さらに奥本選手は24周目に記録した2分4秒081で決勝中のファステストラップも獲得していた。
ドライバーポイントは代走の2名が獲得するためレギュラードライバーの谷口選手、片岡選手のランキングには影響しないが、ドライバーポイントとは別に付与されるチームポイントは大量に獲得し、ランキング2位に浮上した。
番場琢監督
「監督代行を務めさせていただきました番場です。 今大会、たくさんのご声援をいただき、誠にありがとうございました。予選ではマシンのバランスに苦しみましたが、Q1ではSUPER GTデビューの奥本選手が見事に突破し、Q2では中山選手がしっかりとまとめて8番手を獲得してくれました。ただ、決勝のペースを考えると、早めにパスしておきたいライバルが前方のグリッドにいる状況でした」
「スタートを担当した中山選手は、そのライバルたちを序盤で上手くパスし、素晴らしいペースで周回を重ねてくれました。ペースは良かったのですが、ピットアウト後の展開やGT500クラスとの交錯タイミングを計算し、全チームの中で最も早く、16周目にピットへ呼び戻す決断をしました。ピットアウト直後にワイルドカードの1台に引っかかり、少しタイムをロスしてしまいましたが、戦略が非常によく機能し、ポジションを大きく上げることができました」
「レース終盤の0号車とのバトルでは、奥本選手が少しずつプレッシャーを掛けつつも、熱い走りのなかに冷静さを保った、見事な戦いを見せてくれました。無線でのやり取りも冷静で必ず来るチャンスは逃さないという強い意志を感じました。そして、オーバーテイクを成功させた後は、すぐにギャップを築き、無事に3位でチェッカーを受けることができました」
「今回、監督代行という大役を務めさせていただきましたが、チームの雰囲気は非常に良く、中山選手と奥本選手の相性も抜群で、チーム全員で支え合いながら良い流れを作れた週末だったと感じています」
「監督として再びこのチームとともに戦えたこと、そして、かつてドライバーとして優勝したこのマレーシアの地で、今度は監督という立場で再び表彰台を獲得できたことを、心から嬉しく思います。皆さんのたくさんの応援があったからこそ、最後までしっかり車を運べたのだと思うので、これからの日本でのレースもチームを応援していただければと思います。ありがとうございました」
中山友貴選手
「公式練習は久しぶりの走行だったため、まずはサーキットに慣れること、そしてマシンとタイヤの感触を確かめることを目的に、ふたりで時間をシェアして走行しました。ロングランのペースは非常に良かったものの、一発のタイム、特に2日目の公式練習では伸び悩みました。公式練習でのセッティングが詰めきれていなかったこともあり、マシンには強いアンダーステアが残ってしまい、予選までにどう修正するかが大きな課題となりました」
「予選は、Q1を奥本選手、Q2を私が担当しました。Q1は無事に突破できたものの、マシンのアンダーステアは公式練習から改善されていませんでした。Q2に向けてはさらに対策を施して挑みましたが、思い切ったアタックも及ばず、依然としてアンダーステアが解消されないままでは思うようにタイムを伸ばすことができませんでした」
「公式練習と予選で使った2セットのニュータイヤの経験だけで、マシンの限界をすべて引き出せたかというと、正直、まだポテンシャルを出し切れていないという思いもあります。しかしそれ以上に、マシンのアンダーステアの強さがタイムに大きく影響したと感じています。この経験は、今後に向けて非常に価値のあるものとなりました」
「決勝では、私がスタートドライバーを務めました。スタートではポジションを上げることを第一に目標としましたが、今回は代役での参戦ということもあり、リスクを負いすぎないことも意識していました。スタート直後に2台をパスするチャンスがありましたが、接触の可能性もあったため、ここは自分が引くという選択をしました。その後、ストレートの速いGT-Rにやや強引な形で先行を許してしまいましたが、GT500車両が接近したタイミングを利用して3台をオーバーテイクし、スタート時より2つポジションを上げて奥本選手にマシンを引き継ぐことができました」
「後半を担当した奥本選手は、チームの的確なピット戦略と、デビュー戦とは思えない力強く自信に満ちた走りでオーバーテイクを重ね、見事3位表彰台を獲得してくれました。今回は代役での参戦、久しぶりのサーキット、そしてパートナーはデビューレースという、難しい要素が重なるレースになると予想していました。予選結果が振るわなかった中で、決勝で最高の結果を残すことができ、大変嬉しく思うと同時に、大きな自信にもなりました。そして何より、奥本選手の輝かしいデビューレースをアシストできたことを誇りに思います」
「チームから託された『多くのポイント獲得』という目標を達成でき、非常に充実した、楽しい週末となりました。この週末、速さと安定性を両立した素晴らしいタイヤを用意してくださった横浜ゴム様、そして私たちを温かく迎え入れ、レースウイークをスムーズに進められるようサポートしてくださったチームの皆様に、心から感謝申し上げます」
奥本隼士選手
「スーパーGTは初出場でしたが、事前に公式テストやタイヤテストで走行する機会を多くいただき、マシンの特性を深く理解した状態でレースウィークに入ることができました。また、初めて走行するセパン・サーキットも、事前練習の機会をいただいたことで、マシンとサーキットのフィーリングを擦り合わせるのに時間はかかりませんでした」
「公式練習1回目では、走り出しを担当しました。チームが用意してくれた持ち込みのセッティングが素晴らしく、また、谷口選手、片岡選手がテストを重ねて選定してくださったタイヤもセパンの路面に非常によくマッチしており『今週は、もしかしたらいけるかもしれない…!』と直感するほどの好感触でした」
「私のアタック時点ではトップタイムを記録し、その後タイムを更新したライバルはいたものの、セッションの最終結果は4番手。ロングランを担当した中山選手も他車を上回るペースで周回を重ねており、チーム全体として確かな手応えを感じていました」
「翌日の公式練習では中山選手が走り出しを担当。前日からの路面コンディションの変化が大きく、セットアップをさらに煮詰めていく必要がありましたが、その中でもロングランのペースは変わらず好調だったため、予選に向けてポジティブな状態で臨むことができました」
「そして迎えた予選、私はQ1を担当しました。私たちが振り分けられたA組には、午前の練習で上位だった車両が多く『何が何でもQ1を突破しなければ』と強い気持ちでいました。そんななか、チームメイトの中山選手やチームの皆さんが背中を押してくださったおかげで、安心してアタックに集中することができ、グループ4位でQ2へ繋ぐことができました。Q2に向けてチームとセッティングを協議し、中山選手のアタックで8番手というシングルグリッドを獲得することができました」
「決勝では中山選手がスタートを担当してくれて8番手から6番手にポジションを上げるお手本のような走りを見せてくれてものすごく気合が入りましたし、同時に不安や緊張も吹き飛びました。自分がマシンに乗り込んでからは、毎周予選のつもりでプッシュしました。チームの戦略のおかげでアンダーカットに成功し、4番手まで浮上。8秒ほど前方の3番手のマシンにプッシュをし続けると目前まで迫ることができました」
「その時は『前のマシンを抜いて、自分の行きたい世界に行くんだ!』という強い思いと、冷静さの中に極限まで集中力が高まっていくような、不思議な感覚で走っていました。そして残り5周でオーバーテイクに成功し、そのまま3位でチェッカーを受けることができました」
「小さな頃から憧れたスーパーGTの舞台、その中でも3度のシリーズチャンピオンチームである、GOODSMILE RACING & TeamUKYO様で走らせて貰うことができ私の夢が叶った瞬間でした。このチャンスを頂いた感謝の気持ちは結果でお返しするしかないという思いで、一周一周を全力で走りました」
「チーム代表の安藝さん、パートナードライバーの中山選手、番場監督代行、チームスタッフの皆様、レースがあるにも関わらず応援してくださったスパ隊の皆様や、現地やLIVEで応援してくださった皆様のおかげです。今回いただけた貴重な経験を今後にもしっかり活かし、更に速く強いドライバーになれるよう精進していきます。応援いただきました皆様、本当にありがとうございました!」



