シーズン前半戦を終えたことですし、改めてトップ4チームのそれぞれのクルマの特徴・キャラクターを整理してみましょう。まず、コンストラクターズ首位を独走するメルセデスは、ストレートスピードが速く、高速コーナーも速い。そのため、ダウンフォース量をそこまで必要としないサーキットで特に強さを発揮しています。また、電欠になりやすくリフト・アンド・コーストを多用するサーキットでは、他チームに対しアドバンテージを持って戦えている印象です。
コンストラクターズ2位のフェラーリは、昨年までの特徴だった極端なピーキーさが少し和らぎ、昨年苦しんでいたルイス・ハミルトン(フェラーリ)もうまく乗りこなしています。非常にコーナリングスピードに秀でた車両ですがピーキーではなく、タイヤに対しそこまで厳しくないという部分は優れています。ただ、メルセデスと比較するとPU/ストレートスピードが劣っており、現時点での最大の弱点です。
すでにフェラーリは『ADUO』(追加開発アップグレードの機会/Additional Development Upgrade Opportunities)による最初のアップデートを第8戦オーストリアGPに投入しており、実際少しは改善があると感じます。また今季中に2度目のPUアップデートが投入されると、より面白い存在になるでしょうね。ひとまず、ピーキーで乗り手を選ぶクルマではなく、ドライバーを選ばずに速く走るクルマになったという点で、フェラーリは前年からかなり大きな前進を果たしていると感じます。
コンストラクターズ3位につけるレッドブルは、ホームコースのレッドブルリンクで開催された第8戦オーストリアGPで7カ所に及ぶ大型アップデートを投入しました。このアップデートでクルマがかなり良くなり、トップコンテンダーに戻ってきました。そこからのレースは、『セットアップがウインドウに入れた場合はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が表彰台を狙える』速さを見せています。
ポジティブな部分は、加入1年目のアイザック・ハジャー(レッドブル)がそれなりに乗れていることですね。ハジャーだからレッドブルのクルマに対応できているのか、それともフェルスタッペンしか乗りこなすことができない特殊なキャラクターが改善されて乗り手が順応しやすいクルマに変わったのかはわかりませんが、2台でポイントを稼ぐ必要のあるレッドブルにとっては悪くない状況です。
PUに関しては、レッドブル・フォードのICEが最も高性能であるとFIA国際自動車連盟が判断したことで、ADUOによるPUの追加アップデートの恩恵を授かることができません。それは正直意外でした。ただ逆に言えば車体開発に専念することができる状況です。車体はまだまだ改善すべき場所があり、それは今後の伸び代でもあります。
レッドブルの車両特性はストレートが結構速く、コーナーは高速〜中速域に秀で、コースによっては低速コーナーも悪くないです。ただセットアップのウインドウが狭く、ウインドウに入ることができればメルセデス、フェラーリ、マクラーレンと近い走りを見せますが、ウインドウを外れるとトップ4チーム中4番目のクルマという感じです。
そして、トップ4チーム中唯一のカスタマーPUを使用するマクラーレンは、前年王者であることを忘れてしまうほど、序盤はとにかく苦しみました。ただ、複数回にわたってアップデートを投入し、大型アップデート投入となったハンガリーGPでようやく今季初優勝を飾りました。きちんとトップに返り咲く底力を持ったチームの凄さを垣間見ましたね。
PUについてはシーズン前半戦でかなり学びを得たと思いますし、マクラーレンは勝ち方を知っているチームです。ハンガリーGPでの勝利から良い流れをオランダGPに繋げることができれば、シーズン後半戦でメルセデスやフェラーリにとって怖い存在になるかもしれません。先述のとおりマクラーレンはコーナーが非常に速いクルマです。ハンガリーGPの優勝は決して幸運が授けたものではなく、実力で掴んだ勝利でした。
さて、サマーブレイク明けのシーズン後半戦は、個人的にはアストンマーティン・ホンダがシーズン終了までにどこまでポジションを上げられるかを注視しつつ、タイトル争い、そしてベスト・オブ・ザ・レストの戦いを見守りたいと思います。
また、10月2〜4日にマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットにてバーレーンGPが開催されることが発表されました。2017年以来9年ぶりのセパンでのF1開催ということで、今のF1マシンがセパンでどのような走りを見せるのか、9年前のラップタイムと比較してどれほどのタイムが記録されるのかが気になりますね。データが少ないサーキットですし、熱帯特有のスコールがたびたび降り注ぐセパンですから、大番狂わせが起きる可能性も含め、非常に楽しみです。
【プロフィール】中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わりつつ、フジテレビFODのF1レギュラー解説者を務める。
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