土曜日の主役は、F1参戦10年目でキャリア初ポールポジションを獲得したピエール・ガスリー(アルピーヌ)でした。チームメイトのフランコ・コラピント(アルピーヌ)はランド・ノリス(マクラーレン)を上回る8番手で、アルピーヌが2台揃ってスピードを見せました。なぜアルピーヌがここまで速かったのか。さまざまな理由が考えられますが、まずはクルマのセットアップがスイートスポットにピタリとハマったからではないかと私は考えています。
アルピーヌはストレートスピードがとにかく速く、ダウンフォース量を減らした際、減らした分得られるメリットをしっかりと享受できるクルマです。クルマのプラットフォームやサスペンション・ジオメトリーを含め、ダウンフォースが少なくても戦えるクルマだったことで、ストレートで速さを見せつつ、ブレーキングも良く、低速コーナーでもタイムを落とさなかった。これは非常に大きかったと思います。
高速コーナーも速く、メルセデス勢に大きく差をつけられたのはレズモ(ターン6〜7)くらい。それ以外の区間はブレーキングも、ストレートスピードも合格点で、Rの小さいコーナーでもしっかりとトラクションがかかっていました。それに、Q3のアタックではガスリーが最終ターン11(クルバ・アルボレート/旧称パラボリカ)で神がかり的な走りを見せたことが、ポールポジション獲得に繋がったと見ています。クルマの元々のプラットフォームが高速サーキットに合い、セットアップを持っているとなると、アルピーヌはアゼルバイジャンGPなどでも速さを見せつけるかもしれませんね。
ガスリーは決勝を7位で終え、コラピントは9位となりました。これが、アルピーヌの精一杯の結果だったと思います。予選一発は出せても、タイヤのデグラデーション(性能劣化)もある決勝を、速いペースで走り続けることは、予選とはまた違う難しさがあります。それに、燃料を積んだ状態のクルマのバランスは、トップチームと比べると少し劣っていたように見えました。とはいえ、イタリアGPのベスト・オブ・ザ・レスト争いのなかでは最も強力なクルマでしたね。


■ホンダ育成加藤大翔がFIA F3初優勝。最終戦で期待すること
イタリアGPはサポートレースも見応えがあり、FIA F3では『ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)』の加藤大翔(ARTグランプリ)がスプリントレースでFIA F3初優勝、フィーチャーレースでは3位に入り、2レースともに表彰台登壇となりました。
この週末、ARTグランプリのクルマがすごく良く、チームメイトも好位置にいました。大翔はレース中のタイヤマネジメントをしつつ冷静に、時にアグレッシブさを見せてポジション争いを見せました。冷静に自分自身を俯瞰しながらレースを戦えていることは、本当に素晴らしかったと感じます。今季のFIA F3はマドリンクで最終戦となりますが、しっかりとしたラーニングカーブ(学習曲線)を描きながら、ドライバーとして成長できているとを感じさせるレースでしたね。
大翔はドライバーズランキング6位で最終戦を迎えますが、ランキング3位とは5ポイント差です。最終戦は予選2回、スプリントレース1回(リバースグリッド)、フィーチャーレース2回、獲得できるポイント通常大会より多い特殊な開催フォーマットになります。大翔はもう1回優勝すること、そしてドライバーズランキング3位で最終戦を終えられたら最高だと思います。
また、山越陽悠選手(VAR)と大翔は同ポイントで、山越選手もランキング3位の可能性はあります。FIA F3には今季、中村仁選手(ハイテック/TGR-DC)、りー海夏澄選手(ARTグランプリ)も含め日本人4名が参戦しており、彼らは日本人同士でも切磋琢磨しながら、それぞれ良いレースを見せてくれていますから、個人的には若い日本人ドライバー全員の活躍を応援しています。


【プロフィール】中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わりつつ、フジテレビFODのF1レギュラー解説者を務める。
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