決勝30周目に起きた裕毅とローソンの接触については、それぞれ言い分があるでしょうし、お互いの主張はそれぞれほとんど間違っていないと感じています。ただ、起こるべくして起こったアクシデントのように感じています。

 イタリアGPの決勝直後の興奮が収まりきらない状況下で裕毅は「ローソンのあんな不必要な動きに巻き込まれてしまって」と話したようですが、ローソンに100パーセントの非があるのであれば、ローソンにペナルティが出ているはずです。ただ、今回のアクシデントではどちらにもペナルティは出ていません。

 何度も映像をチェックしましたが、裕毅はローソンのレーシングラインを潰すべく、かなりコース脇ギリギリのところまで寄せています。対するローソンは行き場がなく、何もできない状況にあったという事実があります。そして、ローソンのオンボードを確認すると、ローソンが裕毅を抜くために強引にターンインしたわけでもないとも感じました。

 接触の直前、裕毅のクルマのフロントタイヤとリヤタイヤの間に、ローソンのフロントタイヤが入っている状況でした。こうなると、行き場のないローソンは引くこともできない状態でしたし、アクシデントを避けれる可能性はかなり低かったでしょう。そのため、DAZN中継での解説時にも言ったように『不必要な接触』だったと感じています。審査委員会もそのように判断したからこそ、あのアクシデントはレーシングアクシデントとして処理されたのでしょう。

 レース直後、クルマを降りてもすぐには興奮状態は治りません。そんな状況下でメディアペン(ミックスゾーン)に行って取材を受けると、あのようなコメントになってしまいますが、その時点では裕毅もローソンのオンボードまでは確認できていないでしょう。ただ、裕毅のポジションからすればあのようにコメントすることも理解できます。

 早めにタイヤ交換を済ませていたローソンと、ニュータイヤに履き替えたばかりの裕毅では、裕毅に優先権があると感じますが、同じレーシングドライバーとしてあそこで裕毅に並びに行ったローソンの意図も理解はできます。なので、どちらに非があるとか、そういう面で議論することにはあまり意味はないかなと、正直思います。

2025年F1第16戦イタリアGP 角田裕毅(レッドブル)&リアム・ローソン(レーシングブルズ)

■レッドブルにとって苦手なコースではないバクー市街地

 さて、イタリアGP決勝の終盤はマクラーレンのピットミスに起因するチームオーダーが話題の中心になりました。2番手に上がったオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が、ピット作業で3番手にポジションを下げたノリスに2番手の座をすんなりと譲った一番の要因は『予選、そしてピットに入るまで前に居続けたドライバーに優先権がある』といったようなチーム内の決め事があったのだろうと想像します。

 今後もし、予選から決勝のピットストップまでピアストリが先行し続け、ピットロスでピアストリが下がった場合には、ノリスがチームオーダーを受け入れ、ポジションを譲るということもあるかもしれませんね。また、ピアストリはドライバーズランキング首位で、ノリスに対し大きくリードしているという状況も、ポジション入れ替えをスムーズにしたと感じます。

 次戦はストリートコースのアゼルバイジャンGP。壁に囲まれているとはいえ、ハイスピードかつシケインの多い、モンツァに似た部分もあるコースです。そのため、レッドブルにとって苦手なコースではないでしょう。イタリアGPでリヤウイングを削ってでも、クルマを戦えるウインドウに収めるという、あの判断を行ったフェルスタッペンと、それを支えた彼のチームには底力があると感じました。この経験を経て、フェルスタッペンが何かを見つけたのであれば、次のアゼルバイジャンGPでも大きなチャンスはあるでしょう。

【プロフィール】中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。

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