11月6日、中東のバーレーン・インターナショナル・サーキットで、2025年シーズンの最終戦となる『バプコエナジーズ・バーレーン8時間レース』が幕を開けた。ここでは走行初日となった木曜日のパドックから最新のトピックをお届けする。
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アルピーヌのドライバーであるミック・シューマッハーは、NTTインディカー・シリーズへの移籍が強く噂されているなか、来季2026年年の選択肢をまだ検討中だと述べている。このドイツ人ドライバーは、アメリカへでの新たな挑戦の可能性に先立ち、先月、インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースで、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとのテストを完了した。
シューマッハーが来年シングルシーターに戻ることを決めた場合、彼はそれをスポーツカーでの活動と組み合わせることはしないとし、「ひとつのことに集中したいと考えている」と説明した。「ふたつのシリーズを掛け持ちすると、(大きく異なるクルマの間を)行ったり来たりすることになる。アジャストするために時間を費やしたくないんだ」
プジョー・スポールのテクニカルディレクターであるオリビエ・ジャンソニは、フランスのメーカーが、2026年にステランティスの姉妹ブランドであるシトロエンにおけるABB FIAフォーミュラE世界選手権の職務に専念するため、レースシートから退くジャン-エリック・ベルニュ以外にも、追加のテストドライバーの契約に関心を持っていると述べた。アレックス・クインとマティアス・ベッシェは、日曜日のルーキーテストでプジョー9X8をドライブする予定だ。
ジャンソニは記者団に対し、「シーズン開幕の前後は、JEV(ジャン-エリック・ベルニュ)は非常に多忙になるだろう。だから、彼をリザーブとして完全に頼ることはできない」と語った。「もし何か起こり、彼をクルマに乗せなければならなくなった場合、解決策を見つけることができるとわかっているが、今回のルーキーテストで行っていることのひとつは、今後数年間の可能性を調査することだ」
LMP1とLMP2で幅広いWEC経験を持つ39歳のベッシェをテストで起用する動機についてSportscar365が尋ねたところ、ジャンソニは「何らかの方法で経験を持つ人材が必要だ。彼の直近2回のル・マンでのLMP2のペースは並外れていた。今からカタールまでの間、このクルマでの走行する機会は非常に少ないため、すぐに準備できる人材も必要だと考えた」と答えた。
■ポルシェ・ペンスキーとの3年間を惜しむ
プロトン・コンペティションを率いるクリスチャン・リードはSportscar365に対し、彼のチームが来年もWECで、“エボ”となるフォード・マスタングGT3を引き続き走らせることを確認した。
ジェネシス・マグマ・レーシングは最近、マニクールで新型プロトタイプカー『GMR-001』のテストを完了したが、このテストは雨の影響を受けた。チームが発表した声明によると、かつてのフランスGP開催地での今回の走行は、以前の耐久性の確認に重きをおいたものとは対照的に、「初めてパフォーマンスを最大化することに焦点を当てた」ものだったという。
スポーティングディレクターのガブリエル・タルキーニは次のようにコメントした。「我々はGMR-001ハイパーカーの開発を続けているが、同時に異なる分野にも取り組み、パフォーマンスについて考え始めている。ドライバーがつねにどのような状況でもプッシュできるようにクルマを調整できることを保証する、あらゆる条件下でのセットアップのための、一種の『ツールボックス』を構築する必要がある」
ケビン・エストーレとローレンス・ファントールは先月、ドイツのマンハイムにあるチームの拠点において、6号車ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのクルー全員との夕食会を主催した。ドライバーからチームメンバーへの『感謝』を示すこのイベントは、アンドレ・ロッテラーが在籍していた昨年も行われたものだ。
週末のバーレーン8時間は、このチームにとって最後のWECレースとなる。そのため、クルー全員に『No. 6 Forever』と書かれたTシャツが贈呈された。これはファントールのウェブショップでも販売されており、収益はすべて“ザ・ラリー・ファウンデーション”に寄付されるという。
エストーレは次のように語った。「年末に向けて、皆で一緒に時間を過ごし、感謝の意を伝えるのは良いことだと思った。僕たちはチームとして、クルーとして、そして6号車として過ごした時間に本当に感謝している。イベントを開き、ディナーを楽しみ、限定Tシャツを作るというアイデアがあった。皆が幸せそうで、喜んでくれていたと思う。週末に向けて、誰もが非常にやる気に満ちており、6号車として今年1年とこの時代を良いかたちで終わらせたいと思っている」
ファントールは、エストーレとともにドライバーズ世界選手権を連覇する可能性があったとしても、3回の挑戦で勝利できなかった今年のル・マン24時間レースで目標を達成できなかった失望を埋め合わせるものではないと認めた。「世界選手権に勝った後、ドライバーの視点からすれば、当然ながらル・マンに勝ちたいと思うものだ」と語ったファントール。「もし、どちらかを選べるのなら、ル・マン未勝利と2度のワールドチャンピオンよりは、1回ずつ世界選手権とル・マンで勝つほうを望んだだろう。それが僕の夢だった」
■タイトルを争うライバルチームに移籍?
トヨタのドライバーであるニック・デ・フリースは、日本のメーカーが2017年以降負け無しのバーレーンで、困難なシーズンの最後を好成績で終えることができるかもしれないと期待している。
彼はSportscar365に対し、次のように語った。「歴史的に見て、バーレーンはチームにとってかなり良いトラックだ。このサーキットの特性は我々のパッケージに非常によく合っている。昨年、トヨタは8号車が勝利を収め、7号車も技術的な問題に見舞われるまでは非常に良い結果に向かっていた。今シーズンは挑戦の多いシーズンだったが、ここに来て、ポジティブな形で終えられることを願っている」。
ビスタAFコルセのフランソワ・エリオは、彼が日曜日のルーキーテストでマンタイのポルシェ 911 GT3 Rをテストする予定であるという事実について、今週末バーレーンで彼の21号車フェラーリ296 GT3のクルーがこのドイツチームとLMGT3タイトルを争っていることを考えると「奇妙だ」と認めた。
エリオはSportscar365に対し、次のように述べた。「WECのパドックに来て2年目だが、私のプロフィールはいま、いくつかのチームにとって興味深いものになっているようだ。私にとって、GTドライバーとしてより多くの経験を積む機会と考えている。テストで乗るポルシェは、我々がチャンピオンシップを争っている相手のクルマなので状況は少し奇妙だが、より多くの経験を得るためにも、非常に強力に見えるところに行くのは明らかに良い選択だ」
しかしながらエリオは、来年のWECでマンタイチームに加わるかどうかについては明言を避けた。「私の計画は、もちろんWECに戻ることだ。ふたたび私に会える可能性は十分にある。いま言えるのはそれだけだ」。Sportscar365は、ライアン・ハードウィックがIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に焦点を戻すため空席となる可能性が高いシートについて、他にも複数のブロンズドライバーが候補となっていることを理解している。
ベン・キーティングはSportscar365の取材に対し、TFスポーツとシボレー・コルベット Z06 GT3.Rでさらに1シーズン参戦することにコミットしているが、ふたりの新しいコドライバーを迎える予定だと語った。「どうなるかは95%確信しているが、少しはっきりしない部分もある」と彼は述べた。
キーティングとエドガーとともに33号車コルベットをドライブしているダニエル・ジュンカデラは、新参のジェネシス・マグマ・レーシングの一員としてハイパーカークラスにステップアップする予定だ。ニコ・バローネは、ファン・アメルスフォールト・レーシングと来年のFIA F2に出場する契約を結ぶまで、当初はジュンカデラのシートを引き継ぐ予定だったと理解されている。

■4度のル・マン王者が勇退へ
ケルビン・ファン・デル・リンデは、GT3カテゴリーでの成功を受けて、彼とシャルル・ウィーツが日曜日のルーキーテストでBMW MハイブリッドV8をテストする機会を得たことは「素晴らしい報酬」だと述べたが、多忙なスケジュールのため、この南アフリカ人ドライバーは今週末に先立ち、BMWモータースポーツでのLMDhカーのシムセッションを1回しか行うことができなかったという。
このふたりはチームWRTとともにGTワールドチャレンジ・ヨーロッパの総合タイトルとスプリント・カップタイトルの両方を獲得し、さらにファン・デル・リンデはバサースト12時間、ニュルブルクリンク24時間、鈴鹿1000km、インディアナポリス8時間での勝利によりIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジのタイトルも獲得した。
ファン・デル・リンデはSportscar365に対し、次のように語った。「我々はともに素晴らしいシーズンを過ごした。WRTは本当に多くのビッグレースに勝ち、そのほとんどでシャルル(・ウィーツ)がそばにいてくれたことは幸運だった。彼にとっても、このチャンスは当然のものだと覆っている」
FIA国際自動車連盟は、コナー・ジリッシュが国際Aライセンスに必要な基準を満たさなかったという事実により、日曜日のルーキーテストでキャデラックVシリーズ.Rをテストする機会を拒否された騒動を受け、WECでハイパーカーを運転するための資格に関して次のように明確に説明した。
「FIA競技ライセンスは、FIA自体ではなく、各国の国内競技当局(ASN)を務めるFIAメンバークラブによって発行される。これらのクラブは、各レベルのライセンスを取得するための最低要件を定義する、FIA国際競技規定の付則L第11条に定められたガイドラインに従ってライセンスを発行する」。
WECで長年セーフティカーのドライバーを務め、スチュワードのドライバーアドバイザーであったヤニック・ダルマスは、今週末をもってドライバーオブザーバーの役割から退く。ル・マンで4度の優勝経験を持つ彼は、木曜日の朝のドライバーズブリーフィングで公式な感謝とスタンディングオベーションを受けた。
金曜日のトラックアクションは、現地時間正午(日本時間18時)からのフリープラクティス3と、現地16時(日本時間22時)に開始される予選およびハイパーポールで構成されている。


