AFコルセのフィル・ハンソンは、レース序盤で12号キャデラックVシリーズ.R(ハーツ・チーム・JOTA)の後ろに引っかかったことを嘆いた。彼はそれが83号車フェラーリ499Pのクルーにとって、51号車フェラーリとドライバーズタイトルを争うチャンスを失わせたと感じている。
「最初のスティントの後、我々はタイトル争いの最前線にいた。しかし、僕の2番目のスティントでは、キャデラックによってスティント全体を通して非常に妥協を強いられた。実際。追い越すことができずスタックしてしまったのは、少し受け入れがたい現実だった」
ハンソンによると、サテライト・フェラーリのクルーはその後、何らかのコーションを利用しようと代替戦略を採用したが、最後のセーフティカーは彼らにとって不適切なタイミングで発生した。「レースのある期間で遅れうまく相殺できた時間帯があった。もし、セーフティカーまたはフルコースイエローが適切なタイミングで発生していれば、それを活用することができただろう」と彼は述べた。「いつセーフティカーが出るかを教えてくれる占い師の水晶玉を持っていたなら、僕たちはすべてのレースに勝つだろう。しかし、現実はそうはいかないものだ」
アレックス・リン、ノーマン・ナト、ウィル・スティーブンスの12号車キャデラックは、今シーズン、すべてのレースでポイントを獲得した唯一のハイパーカークルーとなった。このトリオはドライバーズ世界選手権で、ランキング4位に順落としたポルシェ・ペンスキーのローレンス・ファントールとエストーレとわずか1ポイント差の5位でシーズンを完走した。
リンは今年全体を振り返って、「JOTAがキャデラックで成し遂げたことは、それを非常に良いレーシングカーに変えたことだと思う」と語った。「今週末、僕たちがレースをしたコンディション(性能調整レベル)を見ると、明らかに今や良いクルマと見なされている。そしてそれはJOTAの功績だ。僕らは1勝と計3回のポールポジションを獲得した。良い仕事をしたと思うよ」
ジェンソン・バトンはレースの最終スティントで38号車キャデラックに乗り込み、プロドライバーとしてのキャリアを16位で終えた。2009年のF1世界チャンピオンであるバトンは、最後のWECレースのために初期のカート時代に使用していたものに似せた特別な黒と黄色のヘルメットデザインを使用した。また彼は、日曜夜のアワードセレモニーでレガシー賞を受賞し、スピーチを行った。
レース終盤のVSCは15号車BMW MハイブリッドV8がターン11でストップしたことによるものだが、同車の右リヤのホイールが適切に装着されていなかったことが原因であると断定された。これによりBMW MチームWRTには5000ユーロ(約90万円)の罰金が科されている。
関連するスチュワードの公式通知には次のように記されていた。「ビデオを検討し、チーム代表者の話を聞いた結果、スチュワードは15号車が右リヤホイールのボルトが適切に締め付けられていない状態で作業エリアから解放されたと判断した。この問題を広範囲にわたって考慮し、スチュワードはこのインシデントが重大な安全違反を該当すると結論付け、競技者に対し5000ユーロの罰金を科すことを決定した」
アルピーヌのチーム代表であるフィリップ・シノーは、終盤のSCの影響により同チーム最上位のA424(35号車)が11位に終わった中で、マニュファクチャラーズ・スタンディングでBMWを抜き去り5位になるチャンスをわずか1ポイント差で逃したにもかかわらず、同チームのレースを「勇気づけられるもの」と評した。
「良いレースペースを持っていることが分かっていたので、最後の数時間までタイヤを温存する戦略だった。我々はそれを実行し、最後の1時間を迎える前に5位から7位を狙える位置にいた。我々のスタートポジション(13&15番手)を考えると、それは非常に満足のいくものであった。しかし、その後VSCとSCの介入があった。それがレースだ。報われなかったのは明らかにフラストレーションが溜まるが、我々が示したスピードには大きな満足感がある」
■レース後すぐにイタリアへ
一方、プジョー・スポール・テクニカルディレクターのオリヴィエ・ジャンソニは、最初のSC期間後に93&94号車プジョー9X8を早めにピットインさせるという同チームの決定を嘆くこととなった。この決定は、最後の1時間での2回目の中断によって裏目に出てしまい、2台の9X8がトップ5争いから9位と10位に順位を落とすこととになった。
「すべてがうまくいけば、5&6位フィニッシュを達成できることを知っていた」と
ジャンソニは記者団に語った。「これは通常の戦略とそれほど変わるものではなく、我々はそれを行うことを決定した。大きなポイントを獲得するにはリスクを冒す必要があるが、それは完全に報われなかった」
マンタイ・レーシングはLMGT3クラスで連覇を達成した。このドイツのチームとポルシェは、このカテゴリーの2年間の歴史において、ル・マン24時間レースとチャンピオンシップの両方で無敗を維持した。
ポルシェ911 GT3 Rプロジェクトマネージャーのセバスチャン・ゴルツは次のように述べた。「LMGT3カテゴリーにおけるこのサクセスストーリーに勝るものはない。ル・マンでの2回のクラス優勝とLMGT3でのチャンピオンシップタイトルは、決して小さな功績ではない。マンタイとポルシェ・モータースポーツのチームは、これまで築き上げた基盤と、トラックで勝ち取ってきた結果を誇りに思うだろう」
92号車ポルシェ911 GT3 Rのドライバーであるライアン・ハードウィックは、グスタヴォ・メネゼス(2016年/LMP2)、パトリック・リンジー(2018-19年/GTE-Am)、ベン・キーティング(2022年、2023年/GTE-Am)の足跡をたどり、WECタイトルを獲得した4番目のアメリカ人ドライバーとなった。ハードウィックは来年、マンタイとともにIMSAミシュラン・エンデュランス・カップレースに注力することが予想されており、ヤッサー・シャヒン(ベンド・チームWRT/31号車BMW M4 GT3エボ)がWECでこのドイツチームに復帰すると見込まれている。
ハードウィックはまた、グッドイヤー・ウイングフット・アワードを受賞し、シーズン最後のファン投票でロペス、キーティング、マーティン・ベリーを退けた。
チームメイトのリヒャルト・リエツは、マンタイと2015年のGTE-Proタイトルを獲得しており、アストンマーティンのマルコ・ソーレンセンに続くかたちで、ふたつの異なるGTクラスでタイトルを獲得した2番目のドライバーとなった。
バーレーン・インターナショナル・サーキットとWECは、長年フォトグラファーとして活躍してきたアンドリュー・“スキッピー”・ホール氏に土曜日のレース前にケーキを贈呈した。これは、世界中を駆け巡り約30年にわたる輝かしいキャリアを終え、WEC最後のレースを迎える同氏の功績を称えるものだ。ホール氏はまた、日曜夜に行われたアワードセレモニーでエクセレンス賞を授与された。
その他の賞には、レーシング・スピリット・オブ・レマンのドライバーであるエドゥアルド・バリチェロに贈られた年間最優秀新人賞、チームWRTのアハマド・アル・ハーティに贈られた年間最優秀スポーツレーサー賞、TFスポーツオーナーのトム・フェリエに贈られた年間最優秀パーソナリティ賞などがあり、LMGT3クラスでのシーズンを通しての活躍が認められ、ビスタAFコルセのドライバーであるアレッシオ・ロベラには年間のグッドイヤー・ウイングフット・アワードが贈られた。
ジョビナッツィはセレモニーに欠席したひとりだったが、彼のチームメイトであるジェームス・カラドによると、ジョビナッツィは妻アントネッラの出産に立ち会うため、レース直後に帰国したという。これにより、彼は同じ日に世界チャンピオンとなり、父親にもなった。



