さて、ブラッド・ピット主演の映画『F1/エフワン』が6月27日に公開されます。大変嬉しいことに、日本語版の字幕を私が監修させていただきました。字幕の監修は初めての経験ですので、オファーをいただいた際には『自分でいいのかな?』とも思いましたが、新しいことには積極的にチャレンジしていきたいタイプなので、すぐにお受けしました。
字幕の監修といっても何をするのか、なかなかイメージしにくいかもしれませんね。具体的には映画を観た上で、翻訳家さんが制作した日本語訳を照らし合わせ、ストーリーの流れのなかでその日本語訳が視聴者さんにとってわかりやすいものなのか、そしてレース用語について直訳するべきなのか意訳するべきか。意訳する場合はどこまで意訳するべきなのかを私の方で、細かくチェックさせていただきました。
同じシーンを何度も見て、登場人物の発する言葉の背景にある感情を汲んだりするなど、かなり長い時間をかけて監修しています。また、最終稿まで何度もチェックを重ねる必要があり、想像以上に大変な作業でした。というのも、この映画はF1やレースを普段観ているF1ファンやレースファン以外の方も観賞されます。
レースやF1に触れる機会がなかった人たちが、この映画で初めてその世界に触れた際に言葉や用語がわかりやすいようにしつつも、レースファンにとって違和感がありすぎるのもよくないので、そのバランス取りがすごく難しく、相当苦労がありました。ただ、この経験で得た知見も少なくなく、素晴らしい経験をさせていただいたと感じています。
ぜひ劇場で観ていただき、映画『F1/エフワン』のリアリティ、迫力をまずは感じていただきたいですね。IMAXの大きな画面、優れた音響でこの映画を観ると、没入度合いが半端なく、迫力が今までのクルマ映画とは段違いでした。また、今作にはF1の協力もあってフェルスタッペンや裕毅といった実際のF1ドライバーが少し登場したり、本物のF1の現場が映し出されます。
普通の映画では体感できない、そして実際のレース観戦では見ることができない部分がこの映画では実現されています。ぜひ、劇場でこの映画の迫力と、製作陣やF1の本気度を感じて頂きたいです。チームワークや組織の大切さ、レースはドライバーひとりでは勝てないというF1やモータースポーツには欠かせない大切なこともストーリーに盛り込まれており、私たちモータースポーツ業界の人間が伝えたいことも織り交ぜながら、しっかりとエンターテイメント性が高い作品です。
この映画をきっかけに、これからF1やモータースポーツを観てみよう、触れてみようという方が増えたら嬉しいですね。

【プロフィール】中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
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