F1ジャーナリストがお届けするF1の裏話。第12戦オランダGP編です。
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 今年のルイス・ハミルトンは概してかなり上機嫌と言っていい。だが、オランダGPの週末からその後にかけては、いわば昨年のフラストレーションの名残りのようなものが、世間の注目を集めることになった。

 日曜のレースを通じて、ハミルトンは徐々にチームへの不満をつのらせていった。彼としては理解に苦しむ戦略的判断が一度ならずあったからだ。チームメイトとは戦略が異なっていたにもかかわらず、なぜかチームはシャルル・ルクレールに対し、ペースの速いハミルトンに先を譲れと指示するのをためらった。レース後にハミルトンは、あれで少なくともポディウムの一角を占めるチャンスを棒に振ったと語っている。

 その時点で、ハミルトンには自分の方が速いという確信があり、フェラーリも結局はルクレールにピットインを指示した。ところが、ルクレールはその判断に異議を唱え、結果として1周長くコース上にとどまった。

「実に見事な時間の浪費だ。いい仕事をしてくれたよ」。ルクレールがようやくピットに入ったとき、ハミルトンは皮肉な口調でこう言った。その後、彼が無線でピットウォールへ伝える言葉は、ますます無愛想なものになっていった。

 だが、レースをチームメイトよりひとつ前の4位で終えたハミルトンは、その後のメディアとの対話では事態を取り繕おうと努めた。

 彼が口にした罵詈雑言に近い言葉についての質問を受けると、ハミルトンは眉間にしわを寄せ、やや困惑したような表情で問いを発したジャーナリストを見た。

「汚い言葉は使わなかったと思うけど? 罵り言葉は一度も使っていないつもりだよ」

 質問したジャーナリストが「だいぶ苛立っているように聞こえた。今年に入ってからはほとんどなかったことだ」と返すと、守勢に立たされたハミルトンはこう答えた。

「心拍数が170くらいまで上がっていたし、うまくやれば勝てると思っていたからね」

 彼のフラストレーションに追い打ちをかけたのは、かつての所属チームであるメルセデスとフェラーリの対応の違いだった。メルセデスはあくまで沈着冷静に、ジョージ・ラッセルに選手権リーダーのキミ・アントネッリとのポジションの入れ替えを指示した。その効果もあって、ラッセルはハミルトンの追撃から逃げ切り、3位争いを制することができたのだ。ハミルトンは、決定的に重要で難しい判断をするときの手本として、フェラーリはこの例から学ぶべきだと語っている。

「これからもメルセデスは、あんなふうに(迅速に)やるべきことをやるだろう。それは明らかだと思う。彼らにはいいクルマがある。彼らは選手権を争っていて、現状ではリードしている。そして、彼らはすぐに判断をした。一方(フェラーリでは)、僕は待たされている間に何秒かを失った。このことについて、チームの内部で話し合わないといけない」

 さらにハミルトンは、自分が不満をこぼすのは自己中心的な気持ちからではないことを強調した。

「僕は勝つためにここにいて、このチームなら勝てると本気で信じている。今回のレースでは勝てなかったけど、選手権を勝ち取るにはひとつでも多くのポイントを拾っていく必要がある。ここ数戦はペナルティやら何やらで苦戦を強いられてきたし、今日はシャルルの背後で数秒を失った。最終的に選手権の勝敗を分けるのは、そういうところの差なんじゃないかと思うんだ。だけど、これは内輪で話し合うべきことだ。僕の目標はこのチームを選手権タイトルへと導くように努めることで、まだチームとして課題がいくつかあるのは確かだ」

 だが、この話はこれで片付いたわけではなかった。ドライバーが公然とチームを批判したとき、それを聞いたフェラーリの上層部や重役たちが激怒するというのはよくあることだ。それは何十年も前から続くチームの歴史の一部とさえ言える。

 舞台裏でハミルトンへの叱責があった可能性を考えれば、その晩のうちに彼のインスタグラムに次のような投稿があったのも、何ら驚くべきことではなかった。彼は無線で発した言葉について謝罪し、自分のフラストレーションをチームの神聖なホームレースであるモンツァのイタリアGPまで引きずることはないと明言した。

「自分の無線交信やテレビのインタビューの一部を聞き直してみた。つい興奮してフラストレーションを口に出てしまうのは、僕がそうだったように、何かを心から案じているときにはありがちなことだ。だが、あれは本来の僕ではなかった。責任は負うつもりだし、今後は気をつけようと思う。あのような感情はこのチーム、そこにいる人たち、僕らが共に作り上げているものへの信頼から来るものだ。方向性は明確だ。確信もある。そして、戦いはまだ終わってなどいない。チームと僕の応援を続けてくれてありがとう。これからも着実な取り組みを続け、プッシュし続けて、戦い続けるつもりだ」

 ハミルトンの意志に揺るぎはない。一方、フェラーリは2026年のタイトル争いにおいて、重要かつ興味深い局面を迎えているように見える。いまや敵はメルセデスだけではなく、最新のアップデートを投入したマクラーレンが手強い相手として浮上してきた。フェラーリも次のモンツァでエンジンのアップグレードを入れる予定だ。もしこれが期待された効果を発揮すれば、まだハミルトンにも赤いチームで今年の選手権タイトルにチャレンジできる目は残るかもしれない。

2026年F1第12戦オランダGP ルイス・ハミルトン、シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2026年F1第12戦オランダGP ルイス・ハミルトン、シャルル・ルクレール(フェラーリ)

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