F1は時代、そして自動車メーカーを取り巻く経済状況の変化に対応するべく、数年ごとに技術規則(テクニカルレギュレーション)を大きく変化させている。2026年より施行される技術規則は、オーバーテイクの機会や接近戦を促進するべく『小さく、軽く、機敏なマシン』をテーマに制定された。これで車体(シャシー)の幅が100ミリ、ホイールベース(前輪の中心から後輪の中心までの距離)が200ミリ短縮。タイヤの幅、外径も縮小され、最低重量はこれまでよりも30kg軽い768kgへと変更された。
2025年までの車体は、モナコGPのモンテカルロ市街地コースをはじめとする幅が狭いコースではオーバーテイクが困難だった。車体サイズが小さく、軽く、そして俊敏となったことで、コース幅の狭いサーキットにおいても、オーバーテイクや接近戦が期待できるだろう。なお、車体の変化によりダウンフォースは約30パーセント、空気抵抗が約55パーセント減少すると見込まれている。
パワーユニット(PU)に関しても大きな変化があった。2025年までの技術規則では『1.6リッターV6ターボ・ハイブリッド』のうち、ICE(内燃機関)と電気モーター(MGU-K/運動エネルギー回生システム)の出力比率が8:2となっていた。2026年からは、ICE出力が550kwから350kwに減少し、電気モーター出力が120kwから350kwへと約3倍に増加。ICEと電気モーターの出力比率が5:5に変化した。つまり、これまで以上にモーターの出力や性能が問われる規則となった。
また、燃料についても変化があった。2022年からF1は植物由来のエタノールを10パーセント混合した『E10燃料』を使用してきた。2026年からは二酸化炭素を実質的に増やさない合成燃料を100パーセント使用したカーボンニュートラル燃料(CNF)を使用する。なお、この燃料は使用するPUごとに開発が可能だ。PU開発競争において、燃料性能の違いもレースの行方を左右する要素となる。
技術規則の変化はこれだけではない。オーバーテイクの機会や接近戦を促進する一環として新たに『オーバーテイク・モード』が追加された。これは1秒以内で先行する車両が290km/hを超えるとデプロイメント(エネルギー回生)が次第に低下。一方、追う車両は追加のエネルギーがMGU-Kより供給され、オーバーテイクを手助けしてくれるというものだ。
さらには『ドラッグリダクションシステム/DRS』に代わる新たな仕組みとして、『アクティブ・エアロダイナミクス』が導入される。これにより、フロントとリヤのウイングを、標準状態の『コーナーモード』と、低ドラッグ仕様の『ストレートモード』にドライバーが自由に切り替えることができるようになった。


これらの技術規則の変化は、F1マシンの走らせ方にも大きな変化を及ぼす。それゆえに、これまでにない戦略や走りを見ることができるだろう。大規模な技術規則変化を迎えたシーズンは、求められる技術の変化、走らせ方の変化に対応したコンストラクター、ドライバーがシリーズタイトルを掴むことになる。これまで中堅だったチームがトップチームに浮上するチャンスがあるシーズンとなるだけに、シーズン開幕後も続く開発競争の行く末に注目したい。


