苦戦の予選から一転、決勝で見せた粘り強さ
諦めず走り続けて、つかんだ10ポジションアップ!

 HELM MOTORSPORTSは、国内最高峰レースである「SUPER GT」のGT300クラスに、NISMOからのサポートを受け、引き続き挑む。

 3シーズン目となる、2026年は体制不動。チーム代表である平木湧也が第1ドライバーを、第2ドライバーを平木玲次が務め、引き続き兄弟コンビで臨む。監督もまた福山英朗が采配を振い、浦野夢希がエンジニアを担当することでも変わりはない。

 マシンもNISSAN GT-R NISMO GT3のまま、タイヤも横浜ゴムとの強力なパッケージで全8戦を戦っていく。

 前回のレース、鈴鹿サーキットでの第5戦は公式練習で発生したトラブルによって、セットを煮詰めきれないまま予選に挑むこととなり、あと一歩のところでQ1突破ならず。決勝には19番手からのスタートとなった。それでも平木玲次から平木湧也への交代を早めに行い、アンダーカットを狙おうとしたものの……。

 タイヤ交換に手間取ったことで順位を落とすこととなったが、HELM MOTORSPORTSは粘り強さとともに、諦めの悪さには定評がある。終盤になってもペースを落とすことなく走り続けたものの、大クラッシュの発生でセーフティカー(SC)先導のままチェッカーが振られ、最後の悪あがきは許されず。19位という結果に終わる。

 しかし、シリーズ第6戦の舞台、スポーツランドSUGOは昨年、10位を獲得しており、相性は悪くない。テクニカルレイアウトで知られ、かつコースのみならずランオフエリアも広いとは言い難いことで、『何か』が起こる可能性は極めて高い。サクセスウェイトもまだ22kgという状況において、真骨頂発揮を誓う。

■予選

 9月ももう半ばを過ぎ、しかも、ここは東北地方である。これまでのレースのように暑さに苦しむことはなく、温度的には過ごしやすいぐらいなのだが、問題は天気だ。予報によれば、高確率での降雨が伝えられているものの、どうやら終日降り続くのではなさそう。走行中に降らないことを願いつつ、走行中に降らずとも、ひとたび雨が降ればコンディションは大きく変化する。となれば、全チームに条件は一緒とはいえ、より厳しさは増すことになる。

 もちろん、どのようなコンディションでも対応できるように、チームはあらゆる状況を想定して公式練習へと臨んだ。しかし、そんな思いとは裏腹に、走り出しから厳しい現実に直面することとなった。適用されているBoP(車種ごとの性能調整)に、変更があったからだ。

 それでも、限られた時間を無駄にするわけにはいかない。セッション後半には小雨が降り出し、ドライからウエットへと変化する難しいコンディションとなったが、その時間も最大限に活用。ドライバーからのフィードバックをもとに、持ち込みのセットアップから細かな調整を重ね、少しでも車体バランスを改善しようとエンジニア、メカニックが一丸となって試行錯誤を続け、今季最大の立ちはだかる困難へと立ち向かった。

 迎えた公式予選では、普段Q1を担当することの多い平木湧也に代わり、今回は平木玲次がステアリングを握った。公式練習から施してきた変更が少しでも改善につながっていることを期待しながら、平木玲次はアタックへと向かう。

 しかし、依然として状況は厳しく、大幅な改善には至らない。それでも平木玲次は与えられたクルマのパフォーマンスを最大限に引き出そうと、4周目のアタックをミスなくまとめ、1分18秒850を記録する。しかしトップから1秒906差の15番手となり、Q1通過ならず。決勝は29番手、最後尾からのスタートとなった。

 予選を終えてピットへ戻ってきた平木玲次を迎えたスタッフにも、悔しさが広がった。ドライバー、エンジニア、メカニック、そして監督も含め、誰もが厳しい結果を受け止めることとなったが、ここで下を向くわけにはいかない。スポーツランドSUGOは、昨年トップ10フィニッシュを果たした、チームにとって思い入れのあるサーキットでもある。

 最後尾からのスタートという厳しい状況だからこそ、決勝でひとつでも前へ進むために何ができるのか。チームはふたたび全員で課題と向き合い、さらなるパフォーマンスを引き出すべく、決勝に向けてセットアップを見直しながら準備を進めていった。

●平木湧也
「今週は、かなりつらい状況にあるというのが正直なところです。持ち込みのセットアップから少し変更を加えても改善が見られず、うまくハマっていないという印象です。なかなか噛み合わず、ドライコンディションのパフォーマンスでは良いタイムを出すことができないので、とても厳しい状況ですね。ですが、決勝レースは雨が予想されているので、なんとか戦略をしっかりと立てて、ポジションを落とさないようにしっかりと完走を見据えて走ることができれば、ポイント獲得も決して見えない目標ではないと思っています。チームで何ができるかをしっかりと見直して、決勝レースに臨みたいと思います」

●平木玲次
「クルマのセットアップという面において、厳しい状況にあります。車体のパフォーマンスもまったく足りていないというのが、初日の印象ですね。公式練習から車体バランスもあまり良くなく、久しぶりに予選もQ1を担当しましたが、ミスもなかったのに対して、クルマはそれ以上の結果を望めそうにないという状況でした。どうにか改善できないかと試行錯誤していますが、いいところが見つかっていません。決勝レースは天候が読めないところもありますが、順当に走っても厳しい状況なので、荒れた展開になるほど、自分たちにもチャンスは巡ってくるのかなと思っています。データを見て、決勝レースに向けてできることを最大限にして、なんとかいい結果を持ち帰りたいです」

●福山英朗 監督
「初日を終えて本当に脱力してしまいました。自分たちの努力の足りなさを棚に上げているわけではありませんが、今回は特にBoPによって厳しい状況ですね。自分たちは常にNISSAN GT-R NISMO GT3の中で“1番”を取りたいという思いで臨んでいますし、ファンの皆様やスポンサーの皆様にも、より良い順位を獲得してお返ししなければなりませんが、今回の予選ではなし得ることはできませんでした。試練ですね。この日本を代表するSUPER GTシリーズに出場して、多くの人々の注目を浴びて走れるという喜びを忘れずに、戦わなければなりません。この場で戦い続けられることに喜びを感じて、1周、1周を大切に戦い続けるしかありません。腐っている暇はありません。しっかりと見直して、決勝レースも一歩ずつ歩み続けていきます」

■決勝

 曇り予報ながら、朝から断続的に小雨が降り、スポーツランドSUGOの上空はどんよりとした雲に覆われていた。湿度も高く、時折蒸し暑さを感じるなか、第6戦SUGOはついに決勝日を迎えた。

 大会期間はシルバーウイークの真っ只中ということもあり、週末を通して子どもから大人まで3万100人もの観客がサーキットへ足を運んだ。決勝前最後となるウォームアップ走行は、場所によってはマシンが水飛沫を上げるほど路面に水が残っており、決勝に向けたセットアップを充分に確認することが難しい状況ではあった。それでもチームは、今大会を通して悩まされていたアンダーステアを少しでも改善するべく、さらなる対策を施して決勝へと臨むことに。

 多くのファンが見守るなか、300kmレースのスタート時刻が刻々と迫り、スタートドライバーを務める平木玲次も集中力を高めていく。ウォームアップ走行時と比べれば、レコードライン上はほぼ乾いていたものの、ひとたびラインを外せば足元をすくわれかねないウエットパッチが各所に残っていたことから、レースはセーフティカー(SC)先導で幕を開けた。

 SCが隊列を先導した後、5周目からいよいよレーシングスピードでの戦いがスタート。最後尾から巻き返しを狙う平木玲次は、序盤から果敢に攻め立て、翌6周目には27番手にポジションを上げた。しかし、8周目の1コーナーで、争っていた車両と接触。幸いHELM MOTORSPORTS GT-Rに大きなダメージはなく、走行を続けることができたものの、この接触によって前方の集団から大きく離され、序盤からふたたび追い上げを強いられることとなった。

 それでも、平木玲次は決して諦めることなく、持ち前の粘り強さを発揮して前を追い続けた。徐々に前方を走る車両との差を縮めていくと、ライバルのアクシデントなどもあり、17周目には24番手まで挽回。さらに24周目には23番手へとポジションを上げた。

 何よりチームにとって大きかったのは、予選まで苦しんでいた状況から確かな変化が表れていたことだった。決勝に向けて施したアンダーステア対策が功を奏し、レースペースは決して悪くない。予選では充分に発揮することのできなかったポテンシャルを引き出し、周囲のライバルとも戦えるだけの手応えを感じながら、平木玲次は着実にレースを組み立てていった。

 そして25周目、チームにさらなる巻き返しのチャンスが訪れる。コース上のアクシデントによってSCが導入されたことで、それまで広がっていた前方とのギャップが一気に縮まったのだ。最後尾から少しずつ這い上がってきたHELM MOTORSPORTS GT-Rにとって、このSCはレース中盤以降へ向けた大きな好機となった。

 この好機を逃すまいと、即座に戦略を組み立て、SC明けの31周目に平木玲次をピットへと呼び戻す。チャンスを最大限に活かすべく、メカニックも迅速かつ正確なピット作業を披露。HELM MOTORSPORTS GT-Rのステアリングを平木湧也へと託し、後半スティントへ送り出した。チームの仕事に応えるように、平木湧也もアグレッシブな走りライバルたちを捉えていき、持ち前の速さと決勝で取り戻したクルマのパフォーマンスを武器に、前方のライバルを追いかけていく。

 全車がピット作業を終えた50周目には21番手までポジションを上げ、その後も前方との差をじわじわと縮めていった。そして59周目、ついに前を走る1台をオーバーテイク! さらにその先のライバルとは1秒半のギャップがあったものの、好調なレースペースを維持しつつ、着実にその差を削りながら射程圏内へと捉えていった。

 しかし、ここで序盤の接触に対し、5秒のタイムペナルティが科されることに。最後尾からここまで着実にポジションを上げてきただけに、ふたたび苦境に陥ったとはいえ、ここまでの追い上げを無駄にするわけにはいかない。ペナルティを受けても順位を守り切れるだけのギャップを築くべく、平木湧也は最後までプッシュを続けた。

 終盤にはさらに1台を捉えて19番手まで浮上すると、そこからは後続とのギャップを少しでも広げようと、なおもアクセルを緩めることなく走り切った。その結果、チェッカー後に5秒が加算されたものの順位に変動はなく、HELM MOTORSPORTS GT-Rは19位でフィニッシュ。最後尾29番手から10ポジションアップを果たし、厳しい状況から大きく挽回してレースを終えた。

 予選では思うようにペースを引き出せず、最後尾からのスタートという厳しい現実に、ドライバーだけでなくチーム全体に悔しさが広がっていた。それでも決して諦めることなく、決勝までに少しでも良い方向へ導こうと全員で試行錯誤を重ねた。その努力が結果につながり、レースを終えたピットには、前日には見られなかった笑顔も少しずつ戻っていた。もちろん、19位という結果に満足しているわけではない。それでも、現在のパッケージで引き出せるパフォーマンスを決勝で発揮し、最後尾からでもライバルと戦いながら順位を上げられたことは、チームにとってひとつの収穫となった。

 一方で、次戦以降に向けて取り組むべき課題も改めて明確になった。決勝でこれだけの追い上げを見せられるからこそ、より前方のグリッドからスタートすることができれば、さらに上位で戦える可能性も広がってくる。そのためにも、シーズンを通して課題としてきた予選でのHELM MOTORSPORTS GT-Rのパフォーマンスをいかに底上げしていくか。今回、得られた手応えを次につなげるためにも、チーム全員でこの課題と向き合い、さらなる改善を進めていく。

●平木湧也
「セットアップの変更を加えたことで、セッティングがうまく噛み合ったのか、決勝のコンディションにマッチングしていたのかはわかりませんが、良い方向には進めています。ただ、いつもと変わらない状況だなとも感じています。やっぱり、予選でのパフォーマンス不足と、予選の順位が良くないという課題が続いているというのが正直なところです。決勝でこれだけ順位を上げられるということは、予選のパフォーマンスも同じように発揮する必要がありますし、今まで以上に見極めていく必要があると感じています。それが何かというのはまだ見つけられていないというのは正直なところですが、今後に向けて見つけていかなければいけません。次戦のオートポリスに向けても頑張って見つけて、対策して臨めるようにしていきます」

●平木玲次
「自身のスティントでは、相手に仕掛ける時に1コーナーで接触をしてしまいました。僕はしっかりとブレーキでも止まっていましたが、結果的に接触になってしまったのは反省点です。その後はペースも悪くありませんでしたし、前の集団にも追いついて何台かオーバーテイクもでき、いい状態で次につなげることができました。予選も今までにないほど悪い状況でしたが、決勝ではいつものようにロングランのペースも良かったので、今後は予選でのパフォーマンス不足を改善していかなければ、さらに上位で戦うのは難しい状況にあると感じています。何か根本的なものが噛み合っていないと思っています。次戦のオートポリス大会では、課題としている予選でポテンシャルをうまく引き出せるように、今回のレースをしっかりと研究して頑張りたいです」

●福山英朗 監督
「厳しい状況のなかでドライバーも最大限の力を発揮して頑張ってくれたし、ピットストップも早く、決勝レースはとても良かったです。本当にドライバーもスタッフもみんな、とてもよくやってくれました。ですが、このウィークでひとつだけ悪かったのは、やっぱり予選結果ですね。それは今後に向けても改善が必要です。ただ、実はこの決勝がどうして良かったのか……、確かな理由がつかめていないのが正直なところですね。なので、それらが分かってこないと、予選の良さも作っていけないので、今何が必要で、何を大事にしてセットアップを組んでいけば良いのか、レース用のセットアップで何を大事にどうするかというのをしっかりと分析する必要がありますね。それらが明確に見えてきたら、いつでもそこに戻ってくることができるでしょうし、予選に対してもさらなるチャレンジがまたできるようになると思っています。しっかりと解決していかなければならないところですね。このチームなら大丈夫だと思います。次戦のオートポリスで見届けてください」

■NEXT RACE

 10月17~18日に行われる次回のレース、シリーズ第7戦はオートポリスが舞台です。シーズンも終盤戦へと入り、一戦一戦の重みはさらに増していきます。最後尾から10ポジション挽回した、今回の粘り強さを自信に変え、ふたたびポイント獲得を争う位置へ。HELM MOTORSPORTSらしく最後まで諦めることなく、チーム一丸となって、さらなる上位進出を目指していきます。どうぞ、ご期待ください。

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