開幕戦でワンツー・フィニッシュを飾り、ライバルを圧倒したメルセデスについてはパワーユニット(PU)性能の高さがクローズアップされることが多い印象です。ただ、クルマ自体も非常に良くできており、昨年までは『リヤはしっかりしつつも、フロントがナイーブ』という印象でしたが、今年のクルマはフロントもしっかりと安定しており、コーナーの旋回スピードでライバル勢よりもアドバンテージを持っています。

 また、PUのエネルギーマネジメントについては、ソフトウェアの部分でもアドバンテージを有していそうですね。同じメルセデスPUを搭載するマクラーレンと比較すると、エネルギーマネジメントの面で両者に違いがあり、メルセデスの方が上手くマネージできています。同じPUでも差が出る部分があるということは、PU運用に関しチーム独自の解析も一歩先を行っているためではないでしょうか。

 車体とPUのマッチングに関しても、メルセデスは設計段階から車体とPUをそれぞれどのような方向性で作り上げるのかを決めた上で開発に臨んでいるでしょう。F1はPUだけが優れていても、車体だけが優れていても勝つことはできません。車体とPUの相性が良くなければ、パフォーマンスを発揮することが難しいレースです。カスタマーチームであるマクラーレンとの差を見ると、今季前半は特にメルセデスやフェラーリといったワークスチームが、PUの持つ最大のポテンシャルを発揮してくるだろうと、改めて感じます。

2026年F1第1戦オーストラリアGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2026年F1第1戦オーストラリアGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)

■ホンダとアストンマーティンへの想い。アロンソが魅せた職人技

 2026年シーズンは、ホンダがアストンマーティンにPUをワークス供給するかたちでF1に復帰を果たしました。ただ、開幕前のテストから難しい状況が続いています。報道を通じてさまざまなコメントや情報が飛び交っていますが、まだシーズンは始まったばかりですし、アストンマーティンもエイドリアン・ニューウェイ(アストンマーティンF1チーム代表兼マネージングテクニカルパートナー)が加入して、彼が主軸としてマシン開発を担った最初の1年目を迎えています。

 つまり、アストンマーティンとホンダは、ともにリスタートを切った状況と言えます。リスタート同士だけに、最初からすべてがうまく噛み合うことは難しいでしょう。前半戦は少なくとも苦戦するだろうということは、開幕前テストが行われる以前から想像できたことです。

フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
2026年F1第1戦オーストラリアGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)

 ホンダ、そしてアストンマーティンは今ある課題に対し、全力をかけて取り組んでいる状況だと思います。オーストラリアGPではフェルナンド・アロンソはリタイア、ランス・ストロールはチェッカーを受けましたが、周回数が足りず完走扱いには届きませんでした。ただ、開幕前のテスト段階から考えれば、1レース分に届かずも周回数を稼げたことはポジティブだと感じます。

 問題解決には、その場限りの応急処置だけではなく、とにかく1周でも長く走り、そこから得られるデータを分析し、抱えている問題の根本となる原因を特定することが重要です。決勝では2台ともできる限り走行距離を稼ごうとしており、完走には至りませんでしたが、今できることはやり尽くしたように見えました。

 今はホンダとアストンマーティンに過大な期待をする状況ではないですし、苦戦する状況に対し外部からネガティブな言葉を発することに何も意味はないでしょう。当事者であるホンダ、そしてアストンマーティンがひとつになり、ともに前に進むことが、問題解決へ向けた一番の近道だと思います。彼らが問題解決に辿り着き、中団、そしてトップグループでレースを戦うことを、心から願っています。

 また、決勝でアロンソが見せた抜群のスタートは見事でしたね。フリー走行の間にどこまでスタート練習ができていたかはわかりませんが、スタートで大きく出遅れるチームもあるなか、エネルギーマネジメントも含めて見事なスタートだったと感じます。リアム・ローソン(レーシングブルズ)が大きく出遅れて、ホームストレート上で混乱が生じる合間をすり抜けたということもありますが、ターン1を過ぎた後のポジション取りも含めてアロンソは職人技を見せました。彼の巧みな技は、今後に向けても楽しみな部分ですね。シーズンが進むにつれて、アロンソの技を見れる機会が増えることを楽しみにしています。

 そして、メルボルンではホンダの若手ドライバー育成プログラム『ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト/HFDP』所属の加藤大翔(ARTグランプリ)がフィーチャーレースで3位表彰台を掴みました。FIA F3デビュー大会から非常に良いパフォーマンスを見せてくれたと感じます。

 彼は速さがありますし、最近は速さに加えて強さをかなり身につけてきています。ホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)時代から見てきたドライバーですから、私にとっても嬉しい結果でした。ただ、大翔にはこれに満足することなく、次は表彰台の真ん中に立ってほしいですね。毎回表彰台を争う位置でレースを戦ってほしいですし、それができなければ上が見えてきません。引き続き、大翔の活躍も楽しみに見守りたいと思っています。

加藤大翔(ARTグランプリ/HFDP)
2026年FIA F3第1戦メルボルン フィーチャーレースで3位入賞を果たした加藤大翔(ARTグランプリ/HFDP)

【プロフィール】中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わりつつ、フジテレビFODのF1レギュラー解説者を務める。

『FOD F1プラン』説明会
『FOD F1プラン』説明会に登壇したサッシャ氏(左)と中野信治氏(右)

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