ホンダ・シビック・タイプR-GT陣営が表彰台を独占したオートポリスでの2025スーパーGT第7戦。レース残り30分ほどからは64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTの大草りきと、16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTの佐藤蓮による2位争いが繰り広げられた。レース後、ふたりにバトルの感想の聞いた。
■「ここしかない」ワンチャンスに賭けた大草りき
「今週は本当に戦闘力が高かったです。予選も良かったですし、ロングランは公式練習のときから自信があったので、決勝も伊沢(拓也)さんとまとめることができたので良かったです」と言うのは、レース残り1分で2位を勝ち取った64号車Moduloの大草だ。
前戦SUGOでの大クラッシュから、マシンはフロントと右サイドのクラッシャブルストラクチャー(衝撃吸収構造)が機能したおかげで、モノコックなどを修復して使えることになり、オートポリス戦に臨んだ64号車Modulo。前日の予選では大草がQ1トップ通過を果たし、Q2では伊沢が8番手に。決勝では序盤に伊沢が24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zと接触しドライブスルーペナルティを科されてしまうが、第2&3スティントを担当した大草がポジションを上げ、終盤はホンダの若手バトルを展開した。
先輩、伊沢が受けてしまったペナルティが逆に大草のハートに火を付けた。3時間レースということでペナルティにもめげず「別に諦めるわけではなく『挽回しよう』という気持ちしかありませんでした。だからこそ、終盤追い上げることができました」と大草が言うとおり、その後は着実に順位アップ。59周目にはGT300クラスの車両ストップでフルコースイエロー(FCY)が導入されると、64号車ModuloはFCY直前のピットインに成功。これでアドバンテージを得ると、16号車ARTAの佐藤との2番手争いを繰り広げる。
「追い抜きどころの手前(最終コーナー立ち上がりからストレート)が(佐藤)蓮のほうが速いことが多く、なかなか近づくことができませんでした」と、おなじくホンダの若手、そしてシビック・タイプR-GT同士のバトルを振り返る大草。レース残り30分ほどからの争いは膠着状態が続いたが、残り1分で大草がオーバーテイクを決め、2位表彰台を獲得した。
「僕のほうが1コーナーから先が速くて追いつくのですが、そこから先は蓮のほうが速かったですね。最後はワンチャンスに賭けようと『もうここしかない!』と思って第1ヘアピンのアウトから並びました。しっかりと仕留めきれたので良かったです。残り時間も迫っていて、ギリギリ間に合ったのでホッとしました」
そう胸をなで下ろす大草。ゴムカスがタイヤに付着するピックアップがあったとのことだが、装着するダンロップタイヤも「ここ数戦かなりの進化をしていて、ブリヂストンに肉薄できるところまで来ている」と感じており、最終戦でもこの勢いを続けたいと締める。
「ホンダ表彰台独占のなか、2番目に立つことができたのは嬉しいですね。最終戦では、みんなでもう一段ギヤを上げて、有終の美で終わりたいと思います」
■「自分の仕事をやりきれなかった」と悔やむ佐藤蓮
一方、3時間レースの残り1分で2位を明け渡してしまった佐藤は「レース途中の接触で左フロントカナードにダメージがあり、その影響で後半タイヤが苦しくなってしまいました。(大草に)低速コーナーで並ばれてしまったので、どうしようもなかったですね」と肩を落とす。
リヤウイングの角度を削り、ストレートスピードを重視したセットアップでオートポリスに挑んだ16号車ARTAは、レース中のピックアップも「けっこう苦しかった」と悩まされたという。
大津弘樹を含め、16号車ARTAのドライバーふたりは1回目のピットストップで燃料を満タンにして2回目の給油時間を短くするチームの作戦と、隊列でバトルをしていた上位勢を早めのピットインで逆転したアンダーカットは良かったと振り返るも、抜かれた佐藤は複雑な心境の様子。
「ホンダ勢で表彰台を独占できたことは嬉しいです。また、僕たちはこれまで表彰台に上がることができていなかったので、まず第一歩としては良かったと思いますけど、やはり『ホンダ勢のトップでいたかった』という気持ちはもちろんあります」
「本当に最後はペースが2秒以上違っていたので、もう抑えるのがやっとでした。(表彰台は)嬉しいですけど、悔しいことは悔しいですね……。自分の中には『自分の仕事をやり切ることができなかった』という気持ちがあります」
最後には「しっかりと見直して、もてぎに向けて準備したいと思います」と語った佐藤。16号車ARTAは第5戦と第6戦での2戦連続ポールポジションなど、速さは見せているが優勝には結びついていない。シビックラストレースの最終戦もてぎでホンダ勢トップ、そして勝利を飾ることはできるのだろうか。


