■“エンジニアリング魂”に火をつけて戦う

 言葉には、人間を引っ張る力がある。中嶋副社長は、新スローガンの成果をさっそくル・マンの現場で感じたという。

「エンジニアひとりひとり、この言葉の受け止め方は違うかもしれません。もしかしたらある人は追い込まれているかもしれないし、ある人は『俺たちの時代が来た!』と思っているかもしれない。ただGRという大きな団体のなかの『ワン・オブ・ゼム』でいるのではなく、TOYOTA RACINGでは『自分たちがエンジニアリングを徹底的に磨くんだ!』と、このマインドの部分が一番大きいと思います。過去からこのプロジェクトに関わってきたスタッフに聞くと、『雰囲気が変わったよ』と言われました。まずはそこから変わらないといけませんから」

上司に気を遣っていたらレースには勝てない。ル・マン優勝の『TOYOTA RACING』で起きつつある“魂への着火”

 自らもエンジニア出身である中嶋副社長は、「技術屋が技術屋らしく、いきいきと笑顔になる」ことがTOYOTA RACINGのひとつのゴールであると話す。

「僕は、エンジニアリング魂に火をつけたいんです。『その技術をやりなさい、あの技術をやりなさい』ではなく、『負けて悔しい』『自分たちのレースができなくて悔しい』と。そこから何ができるのかを考える。そういった部分が、若干弱っていたのではないかと思っています」

 個性を大事に、トガった技術屋集団を目指すTOYOTA RACING。その姿勢は、今年のル・マンのパドックのファン・ビレッジにも表れていた。

 昨年までは多くの他メーカーと同様にレーシングカーなどが展示されていたトヨタのブースにディスプレイされていたのはなんと、かつてル・マンを戦ったTS020とTS050ハイブリッドに搭載されていたエンジンの実機だった。これほどド直球に“技術屋集団”であることをアピールするものはないだろう。実際、ル・マンを愛する多くの観客が、その技術力の結晶に熱視線を送っていた。ル・マンでの栄誉ある勝利とともに、TOYOTA RACINGの「トガりかた」はこういったところからも世界に浸透していくのかもしれない。

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