──片山選手に質問です。ロベルト・メリ選手と組むことでドライバーとして学べる部分はどのようなところがありますか?
片山:彼はずっとプロフェッショナルとしてレースを戦ってきた人物ですし、今日も福岡からオートポリスまでの140kmを自転車で来るくらい、アスリートとしてもすごい人物です。レースでも細かいところまで気づきます。プロフェッショナルさと、レースIQについてはすごく学ぶところが多いですね。
──昨年から使用しているフェラーリ296 GT3について、良いところと課題を教えてください。
片山:課題というと、予選などのときにブースト圧のグラフ上、“スパイク”が出てしまうんです(トゲのように規定範囲内から飛び出してしまう)。それが出ないようにすると、全体的にパワーがダウンしてしまうんです。そのマッピングが難しいですね。
ロベルト・メリ:でも高速コーナーではフェラーリはとても速いと思う。
──普段、セットアップはどちらが決めているんですか?
片山:スーパーGTはセットアップできる時間がかなり少ないので、まずはエンジニアが持ち込みである程度決めてきて、予選までに僕たちが好きなバランスに整えてくれる印象です。ただ、僕もロベルトもフィードバックがかなり似ています。好みが近いですね。基本的にレースウイークでは、僕がロングランをやって、ロベルトが予選のセットを担当する感じです。
ロベルト・メリ:セットアップはかなり似ているね。ヨシの方がドライビングスタイルとしてフロントのグリップがもっと欲しいんだけど、それ以外はかなり近いよ。予選でヨシが走るときは、フロントを少しソフトにするくらいだけど、ほんの少しだよ。レースでは自分たちの違いがマッチングするところを探っていくんだ。フロントのデグラデーションが多いときはヨシに、リヤが多いときは僕に合わせる感じかな。でも最近はより近づいていると思う。
──今年のGT300のヨコハマタイヤの印象について教えてください。
片山:今シーズンは、それこそ毎レースでトップを走っているイメージですし、GT500でも優勝を飾っていますよね。すごくコンペティティブな印象があります。逆に、ヨコハマじゃなければ勝てないのではないかと思うくらいです。勝ちにいけるタイヤだと思いますね。
ロベルト・メリ:僕が日本に来たばかりのときに比べると、すごく進歩を遂げている印象があるね。今、ヨコハマはレースでの強さをさらに伸ばしていると思う。予選では飛び抜けて最強というわけではないけど、しっかり上位を争う実力がある。また雨のときも進歩を遂げてきたと思っているよ。雨量が多いと苦戦するときもあるけど、水量が少ないときはとても良いと思う。一方で、弱点と言えるのがアウトラップだね。そこはそれぞれのタイヤメーカーに特徴があるからヨコハマが特に弱いというわけではないし、全体的にはとても心強いタイヤだよ。
●優勝を飾ったことで次なる目標が芽生える
──では最後に少しプライベートな質問を。レースの中でも、プライベートでもどちらでも結構ですので、お互いに『ここを改善してほしい』という点があれば教えてください。
ロベルト・メリ:ヨシは僕が日本に来だした頃に比べると、すごくプロフェッショナルになったと思う。だからレースウイークに問題はないと思うよ。データを全部チェックしても素晴らしいと思う。敢えて挙げるとするなら、レーシングカートでもいいので、もっとサーキット走行の練習を増やして欲しいということだ。もちろん彼には別の仕事もあるので時間がないのは分かるけどね。でも、今はレースについては完璧だよ。
片山:僕も彼に勧められて時間のある時はカートをやるようになりました。え〜と、彼に変えて欲しいところですよね……あ、そうだ。時間にルーズなところですね。特に朝(笑)。
ロベルト・メリ:スペインでは普通だよ!(笑)。あと、それはジェットラグ(時差ボケ)のせいだね!
──今シーズンも残すところ最終戦です。今季最後のもてぎではどのような走りを見せてくれるのでしょう。
片山:今季のチャンピオンの可能性はなくなってしまいましたが、今シーズンは最大の目標としていた優勝を成し遂げることができました。そして優勝したら、今度はチャンピオン争いというものも見えてきたので、また来季『チャンピオンを獲りたい』という思いが芽生えました。お世話になっている方のためにも、今後も目指していきたいです。最終戦のもてぎは得意なサーキットですし、フェラーリが合っていないわけでもないと思うので、また優勝を狙っていきたいです。
ロベルト・メリ:最終戦は良いレースウイークにしたいね。アウディの頃は得意にしていたんだけど、フェラーリでも優勝を狙っていきたいよ。すでにテストをしているけれど、その時の感触が良かったから楽しみだね!



またコース上でどのように発揮されるのか
⚫︎プロフィール
片山義章(かたやまよしあき):1993年愛知県出身。高校時代まではアメリカンフットボールに熱中し、全国ベスト8、東海地区のMVPになったが、大学進学後、岡山国際サーキットの代表取締役である父とも相談しモータースポーツに転じ、FIA-F4や全日本F3選手権に参戦。2021年からスーパーGTに参戦している。
⚫︎ロベルト・メリ・ムンタン(Roberto Merhi Muntan):1991年スペイン出身。フォーミュラ・ルノーやF3を経て、2012年から2013年にはDTMドイツ・ツーリングカー選手権にも参戦した。2014年からはフォーミュラ・ルノー3.5を戦うかたわら、2015年にはマノー・マルシャのドライバーとしてF1を戦った。その後もFIA F2、WEC世界耐久選手権などさまざまなシリーズで戦い、2022年からはスーパーGTに挑戦している。


