2025 AUTOBACS SUPER GT Round8
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県)/4.801km
11月1日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:18,000人
11月2日(決勝)
天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:32,000人
タイヤに始まりタイヤに終わったシーズン。その苦闘は必ず来季の糧になる
2025年シーズンの最終戦となる第8戦もてぎ。コース特性としては、コーナーとコーナーを直線で結ぶストップ&ゴーサーキットであり、ブレーキとトラクション性能が試される。なかでもリヤのトラクション性能が高いMR(ミッドシップエンジン・リヤドライブ)やRR(リヤエンジン・リヤドライブ)車両が得意としているサーキットだ。
FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両の#30 apr GR86 GTにとっては条件として厳しく、さらにGTA-GT300車両は近年のBoP(性能調整)による重量増、今シーズンはフロントタイヤが小径化され、ブレーキ性能においてマイナス要素となってしまっている。30号車においてはミシュランタイヤで挑む初めてのもてぎ本戦でもある。
劣勢にあることは事実だが、30号車は10月6〜7日にもてぎで開催されたGTE(GTエントラント協会)主催の専有テストに参加し、それまで苦闘してきたミシュランタイヤへの合わせ込みでワンステップ進めた手応えを感じていた。その好感触をもとに、今シーズンの集大成とする一戦に臨む。
公式練習/28位 11月1日(土)9:10〜11:10
曇り空での公式練習開始時の気温は17℃、路面温度は21℃。しかし、前夜の大雨の影響により路面は濡れたところがあり、開始前の8時45分にWET宣言が出されてのスタートとなった。
30号車は路面コンディションが良くなるのを待ち、開始から15分後に織戸学がアウトインしてコースコンディションを確認。まだウエットパッチが残っていたため、さらに9分弱待ってから走り出すことにした。
GTEのもてぎテストで好感触を得ていた30号車だが、そのときとは気温も路面温度も異なり、今回の路面温度21℃に適したタイヤの選択肢はなく、まったくグリップがない状況。結果的に、7周目に刻んだ1分49秒828がこのセッションでのベストタイムとなった。
その後は永井宏明に代わり、さらに織戸、永井へと交代しながらセットアップをアジャストしていくが、バランスは良くなってもタイヤのグリップを得ることはできなかった。リザルトは28位。不安を残したまま、予選に挑むこととなってしまった。
公式予選11月1日(土)
Q1 A/14位 14:00〜14:10 総合結果27位
公式予選は、30号車も出走するGT300クラスのQ1 A組からスタート。開始時のコンディションは気温22℃、路面温度24℃。アタッカーは織戸だ。公式練習から路面温度は3℃上がったが、それでもタイヤは発動しない。織戸はアウトラップ、そしてウォームアップに3周をかけてじっくりとタイヤを温めていったがグリップを得ることはできず、計測5周目のアタックで記録した1分49秒892はA組14番手。前戦オートポリスからの2戦連続でのQ2進出は叶わず、総合順位は27位で予選を終えることになった。
永井宏明選手
「GTEのもてぎテストでちょっと良くなって、それをオートポリスで活かすことができて、そこからさらに進めたセットアップで持ち込みましたが、うまいこといきませんでしたね。テストのときとはコンディションが異なり、持ち込んだタイヤの温度レンジも違いますが、それでも今回の気温には全く合っていなかったのかなと思います」
織戸学選手
「公式練習から予選に向けてはセットアップを変えていきましたが、それでもグリップを高めることはできませんでした。そのセットアップに対して、僕自身もちょっとミスをしてしまった……。でも、うまくアタックできていたとしても、大きなタイムアップは望めなかったと思います。ちょっと厳しい状況でしたね」
金曽裕人監督
「GT300のミシュランタイヤはFIA-GT3用のグローバルタイヤ。今回の気温、路面温度を予測して持ち込んだタイヤでも、温度レンジや荷重がかけ離れすぎていてパフォーマンスを出すことができませんでした。それでも諦めずに一生懸命やって、予選に向けてもできる限りのことをやりましたが、グリップしないことが分かっていて織戸選手を送り出すことしかできなかったのは、つらかったです」
決勝レース(59周)/23位 11月2日(日)13:07〜14:58
13時00分、栃木県警察車両によるパレードラップで始まり、セーフティカー先導のフォーメーションラップを経て2025年シーズンの最終レースがスタートした。気温は20℃、路面温度は22℃のドライコンディションだ。
30号車はGTEもてぎテストで良かったセットアップに戻して決勝に臨んだ。スタートドライバーは永井。オープニングラップの混戦で永井はふたつポジションを上げて25番手に浮上。6周目、GT300車両がコースアウトしてFCY(フルコースイエロー)が導入されたときには24番手に上がった。
タイヤが発動せず、グリップが低いレベルにある状況は変わらなかったが、永井はポジションをキープし続け、ピットタイミングの違いもあって14番手を走行していた25周目にピットへ。給油とタイヤを交換して織戸にバトンを渡した。
全車のルーティンピットが落ち着くと、織戸は25番手を走行。タイヤがグリップしないため摩耗が激しく、ラップタイムもドロップしていく。そのような状況にあっても、39周目には同じミシュランタイヤを履く#20 シェイドレーシングGR86 GTの前に立ち、最終的には23位でフィニッシュした。
今シーズン、同じくミシュランユーザーの20号車とはリザルトが近いポジションになることが多く、お互いタイヤによって劣勢を強いられていたのは否めない。タイヤコンペティションのスーパーGTにあって、FIA-GT3用のグローバルタイヤでは太刀打ちできなかった。2026年はパッケージの変更と車両のアップデートを予定。苦しいながらも今シーズン培ったことを糧に、来シーズンの飛躍を誓う。
永井宏明選手
「決勝に向けてはGTEもてぎテストで良かったセットアップに戻しました。みんな諦めずに最後まで頑張りましたが、結局グリップ感は低いまま、ロングランでのペースも改善することはできませんでした。今シーズンはタイヤをミシュランに変えて挑んだ1年でしたが、苦しい状況が続いてしまいました。高いレベルで競い合っているスーパーGTは、なかなか難しいなとあらためて思いました」
織戸学選手
「決勝にはタイヤを守る方向のセットアップにしましたが、それでもダメでしたね。グリップしなければ当然摩耗は進むし、コースに留まるのがやっとという状況でした。厳しいシーズンで悔しさはありますが、僕にとってはヨコハマタイヤ以外で初めてレースをする1年になり、レース人生のなかでもすごい勉強になりました。シーズンを通して大きなトラブルや事故もなく、感謝しかありません」
金曽裕人監督
「今シーズンは『タイヤに始まりタイヤに終わった』1年でしたね。ミシュランに変えて、ずっとセットアップを模索してきましたが、高いグリップレベルを得られないためにバランスを出すことができませんでした。シーズンを通してドライバーもエンジニアもメカニックも、やれるだけのことをやったという自負はあります。セットアップの理解度は深まったし、ボトルネックだった部分も明確に捉えることもできたし、ある意味チームとしての団結力は強くなりました。来年は正しいパッケージ戻せば、おのずと結果は良くなるはず。それを楽しみに来期を期待してください」

